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どこかに行きたい

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その6(鷲羽・水晶・黒部五郎)

え~♡
それならしょうがないな~♡


とりあえずは、”どの程度強風なのか”とか”どうしても小屋泊推奨なのか”と聞いてみるが昨日、小屋泊の快適さを知ってしまったので気持ちはもう小屋泊に傾いてしまったいた。
あっさりと小屋泊に変更した。

…が!

すでに予算オーバー!
財布の中に持ってきたお金が足りない。6500円×2日分は持って無かった。
しかし、ずーっと昔、テン泊を始めた頃、こんな事もあろうかと天蓋のあまり開けない場所にジップロックに入れた万札の存在を覚えていた。何か行動不能な事が起きて、仕方なく小屋に泊まる事になった時に支払えるように3日分の素泊まりの金額を入れてあったのであった。
使うことは無いだろうなぁって思っていたが、まさかここにきて使うことになろうとは。なーるほど…テン場がガラガラなのはそういう意味だったのか。
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代金を払って部屋に入った。ここは二段ベッドだった。そして空いているが、乾燥室にはザックや登山靴を入れてもOKではなかった。

ひととおり準備片付けが終わってから売店でビールを買った。飲食はどこでできるのか受付で聞いた時に談話室か自炊場でならOKとのことなので自炊場に向かった。自炊場のテーブルで一人の女性がミックスナッツを食べながら地図を見ていて今後の山行の計画でも立てている様だった。
『ここ、よろしいですか?』
同じテーブルに座りたかったので女性に声をかけたら『どうぞ』と快い返事。ビールを飲み持ってきた柿の種を食べた。
まもなくその女性はいそいそと地図を畳んで出て行ったので、一人静かな自炊場で柿の種のポリポリという音を響かせていた。
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早い晩酌も終わり、山荘の窓から外を見ると遠くに青空が見えている。
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これは未だかつて見てない空なので大急ぎでカメラを持って山荘のサンダルを履いて外に出た。
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ここ双六小屋の頭上は晴れて無いが、遠い山の上は晴れている。鷲羽、水晶、黒部五郎の山頂でこんな景色を見たかったなぁと嘆いた。
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山荘に戻ると夕食の時間。
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山荘の従業員のかたが声を上げてお客さんを食堂に誘導していた。
自分は今日も自炊なので自炊場に向かった。いくつかあるテーブルは自炊する人が座っていたので、空いている席の隣に座っている若者に『隣いいっすか?』と聞いてから座った。
今日の晩御飯は”エビピラフと親子丼のもと”。どっちも湯で戻すヤツだ。

湯を沸かしてアルファ化されたエビピラフに注ぐ。できあがりまで15分かかるので受付まで行って”トリスハイボール”を買ってきた。
ハイボールを飲みながら出来上がりを待つ。それでも暇なので真隣りで調理している若い兄ちゃんの夕飯をながめていた。生米から炊き込みご飯を作っていた。凝った夕飯で本当においしそうでうらやましかった。

兄ちゃんは黙ったまま調理しているので、話しかけられたくないのかなぁ…なんて遠慮していたが、トリスハイボールの酔いが回ってきてついつい話しかけてしまった。
静かな話し方をする人だったが、話し好きでいろんな話をした。なーんだ、もっと早く話しかけてればよかったよ。

25歳で保育士だそうだ。今どきの保育園事情をいろいろ聞いた。なかなか話が面白くて、今どきの子供と保護者のモンスターっぷりで話が盛り上がった。少しだけ職業に共通するとこがあるからさ。
男の保育士が保育園でうまくやる条件はやっぱり”印象、見た目”だ、そうだ。 たいへんだなぁと思った。



部屋に戻る。
どうやらここの部屋にいる人は全員、テン泊から小屋泊に変更した人がいるみたいだ。なるほど、だから炊事場が近いのか。 テン泊あきらめ組部屋ってとこね。
そして半強制的に小屋泊になったので オレと同じ”小屋泊自体が初めて”という人がけっこういた。そして初めて経験した小屋内の設備の良さや居心地の良さに驚いて『やべぇ、小屋泊クセになりそう…』と苦笑いを浮かべている。

同感です!



消灯時間になり、布団に潜って寝た。
真夜中、受付のおねぇちゃんが言ったとおり、凄まじい暴風が吹き荒れた。風の塊が建物に衝突するかの様。山荘がドカーンと振動する。こんな風の中、テントにいたら確実に一睡もできないだろう。受付のおねぇちゃん、ホントにありがとう。 最初はテン泊1000円から小屋泊6500円に変更者続出で『儲かりますねぇ』なんてひでぇ事思ったけど、今となっては感謝感謝ですわ。命の恩人と言っても過言じゃないよね。

『あー小屋泊に変更してよかった♡』

そう思いながら枕にスリスリして眠りについた。


4日目

朝、4時台に電気が点いた。
窓から見える景色はやっぱり雨だった。結局最後まで天候は回復しなかった。
同部屋の人達は、ワリと今から山に向かう人が多かったのでガッカリムードがすごい。自分はもう下山するのでそこまで消沈していない。
『今日はもうここに滞在するからギリギリまで寝てます』
と言いながら布団に潜る人たちを横目に着替えながらパッキングもした。


そして6時前に双六山荘をあとにした。
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山荘の裏のテン場にはひと張りだけテントが幕営されていた。
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すげぇ!昨晩の風爆弾に耐えたのか。ってか、絶対眠れなかったと思う。あの風はポールさえ破壊しそうだったからさ。

新穂高に向かう帰路も雨。
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よく雨だと『雷鳥がよく出る』というウワサは本当で、今回の雨続きの山行の中で雷鳥とは やたらと遭遇した。
ただ、今頃遭遇する雷鳥達は、ほぼ成鳥で、人間の姿を見ると逃げてしまう。ヒナを連れている時の やたら近寄ってくる素振りを見せない。これもウワサだが、人間の近くにいれば、ヒナを狙う獣から守ってくれると思ってるため、ヒナ連れの親鳥は人の近くに来る…というのは本当なのかもしれない。

舗装された林道に出た。
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もう一息だ。
歩いていると今から山へ向かう人達とすれ違う。おしゃべりに夢中で楽しそうなおばさんもいるっちゃいるんだけど、ほとんどの人の表情が楽しそうじゃない。無言で口がへの字になっている。
そうだなぁ…天気が悪い中 山へ向かうのは不安だろう。やっぱり往路から晴れてると気分もテンションもアゲアゲになるんだけどね。天気予報だと明後日くらいから回復するらしい。(もうアテになんない)

わさび平小屋まで帰ってきた。
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しとしと雨の中、外のベンチにザックを下ろし、ベンチに腰かけて最後の休憩をした。
涼しいし、喉も乾いていないけど、疲労がMAXだ。山荘にある露天で売っているジュースに気が付いた。
山水に冷やされているジュースやビールを見ていたら、なんだか飲みたくなってきて、普段あまり買わない瓶のラムネを買った。
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昔と変わらぬ開栓方法だった。屋外だし、雨の中だしで、豪快に頭の栓を叩いてビー玉を落とす。意外にも泡が噴き出なかった。
グビっと大量に一口。

っっかぁ~!体に染みわたる~!

友達の『かーしゅな』が若い頃からビールを飲んだ時に放つ名台詞である。
『からだ?おなかとか内臓に じゃねーの?』なんてからかったりしたんだけど、今、彼の言っていることを身をもって理解できた気がする。

おそらく成分のブドウ糖が疲れた筋肉や脳に超吸収されていったんだと思う。立ち上がってザックを背負うとホントに体が軽かった。まあプラシーボ効果だとは思うけど、頭スッキリ、体力500回復した。
そう考えると無理してガンガン進むより、少しずつでも休憩していった方が最終的に早く着くのかもしれないと思った。


新穂高が見えてきた。
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馴染みの『新穂高ロープウェイ』だ。
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こんな天気なんだけど、営業しているのだろうか。

そしてついに4日間の山行を終えて10時半、『新穂高登山指導センター』に帰ってきた。
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おとーちゃん雨の中頑張ったよ。

そこから歩いて10分の駐車場へ到着。
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愛車が変わらぬ姿で待っていてくれた。思わず『ただいま』と言ってしまった。
雨の中、後ろのハッチを開けて、汗なのか雨なのかで濡れた服や靴を脱いでいく。
濡れ物だらけでせまい軽の車内のいたる所にカッパやらズボンやらが積み上げられていった。

指導センターの裏にある温泉に寄って汗と汚れを落とした。
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なんせ3日風呂に入って無いからね。よく身体が痒くならなかったと感心した。最近のオレの額はこんこんと脂が湧き出るし。まるで油田。オレの脂の埋蔵推定量は700億バーレルで、サウジアラビアの量を超える。だからこのまま帰ったら 脂テロ&においテロになってしまいますわ。
洗い場で一通り洗ってお湯で流した後、もう一度最初から全身を洗い直す。雨が降って風情のある露天で川の流れを見ながら数日ぶりのお風呂を楽しんだ。


帰路、長野県の中では陽の光を浴びることは無かった。
途中、昼飯として諏訪の定食屋で野菜炒めじみたものを食べた。久しぶりの生鮮物でシャキシャキとした野菜の歯ごたえに涙が出そうなほど感動した。日々防災食みたいのばっかり食ってたからさ。

地元に帰ってきて夕日でもお日様の光を四日ぶりに浴びた時にはしばらく眺めてしまった。やっぱ太陽っていいなぁ。
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…長野から地元まで尿意が無かったのでほとんど車から降りずに帰ってきたのだが、地元に着いて車から降りた時の気温が35度だった。
山との気温差がすごすぎてクラクラした。







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by moriyart | 2017-09-02 08:37 | 鷲羽・水晶・黒部五郎