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どこかに行きたい

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その3(白馬三山)

テント場まで戻ってきた。2時間ぶりにマイホームへ帰宅である。
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二時半にもなればテントの数がかなり増えていた。
今、到着した人はテントを立てる為に良さそうな場所を一生懸命探している。
区画の中心に立ってその場でぐるぐる回りながら この場所でいいのか検討している。オッサンがくるくる回ってて巣作りする前の鳥みたいでカワイイ。オレもそうだったんだろう、きっと。

坂を下り、自分のテントに戻ると オレのテントの横に今ちょうど到着したカップルが 今まさにテントを張ろうとしている。
お!おとなりさんだ。お隣さんとモメないように第一印象が大事だ。挨拶をした。

彼氏の方は 秋晴れの様なさわやかな『こんにちは』が返ってきたが、彼女の方が完全無視。
あれ?いきなり嫌われてる?まあ、いいや。
おとなりさんの会話が丸聞こえなんだけど、どうやら彼女さんの方がお山の事が詳しいらしく、彼氏にテントの張り方とかを教えている。リアル山ガールね。たくましい。
カップルのくせに各々テントは一張りずつ。彼女のテントは二人用なんだから一緒に寝ればいいのに…。老婆心なのか、たんなるお節介か。オレはイヤな隣人のおっさんである。

もうすぐ3時なんだけど、もう夕飯食ってる人がいる。焼肉みたいなのを焼いているらしくて濃~いタレの匂いが漂ってきた。ああ…うまそう…。
そう思いながら横になっていたら また寝てしまった。

目が覚めると夕飯タイムにいい時間。
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今日も湯で戻すものばかり。周りのテントでは調理している人もいるらしく、ジュージュー焼ける音やいい匂いもする。
お隣のカップルは調理も食べるのも完全に別。一緒に食べればいいのに。ドライなカップルだなぁと思いながらピラフを口に運ぶ。←ストーカー

その後テントでゴロンとしていれば、予報を裏切らなく雨が降り出した。ポツポツとフライシートに雨の音が鳴り出したと思ったら風も出てきた。ここのテント場は風が強いのが有名で、本やネットではだいたい『風が強くて苦労する』と書かれている。そのうち本当に強風が吹きだし、横から風を受けたテントはプリンかゼリーの様にブルブル震えだした。
外にも出れないし、しょうがないので寝た。

夜、目が覚めると風が止んでいる。槍ヶ岳のテント場は携帯の電波がとどいていたのでネットができたのだが、ここは完全に圏外。やることが無いので天井のランタンをずっと眺めていた。
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風が止み、静かなので色んな音が聞こえる。呼吸までは聞こえないが深呼吸くらいは近くのテントから聞こえる。咳払いなんて遥か向こうのテントから聞こえてしまう。
そのうち『ブッ』と音がした。

え?近いけど、となり? 
カノ…いや、なんでもない。


朝、目が覚めると雨が降っていた。
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嗚呼、残念。予報が変わってスッキリ晴れてたら最高だったのに。雨が降っているうえにガスガス。ヘッドライトの前を流れるガスの粒子が大きい。モロ雨雲の中だ。ガスの中にいるだけで濡れてしまう。
隣のテントから携帯のバイブの音が聞こえる。目覚まし機能だろう。そういや『晴れたらご来光見に行こう、起こしてあげるよ』と彼女さんが彼氏に言ってたっけ。
…あれから30分以上ブーブーバイブの音が聞こえてくる。隣のオレがこんなに聞こえてうるさいのに全然起きない。早く起きてくれー、起こしてあげてもいいけど警察に捕まりたくないんじゃー!

今日も朝飯は餅入りラーメン。
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餅は前回は焼いたが、雨で外でできないし、テント内で焼けば香ばしすぎるので焼かずに煮た。


食事も終え、歯を磨いた。
さて、どうするか。
天気も悪そうなのでこのまま下山するか、せっかくなので白馬三山全部登るか。
残り2つの山を登ると今日の行動がおよそ9時間になる。もうすぐ7時。行動開始には少し遅すぎる。でもおそらくここには しばらく来ないだろう。
よし!行こう、残り2山へ。

今、テントの外では雨風共にとても強い。時々『おお!』とか『やべっ!』など聞こえてくるが、それは撤収中のテントが風で吹き飛ばされた持ち主の叫びだ。テントはあんなに大きいのに2kgも無いので地面からの固定を外すといとも簡単に吹き飛ばされてしまう。
テントから顔を出してみればゴロンゴロンと転がりながら飛んでいくテントと それを追いかける兄ちゃん。 別の転がっているテントは骨組みが片方外れてぐるぐる回っているので細いジュラルミンの棒が凶器と化している。他のテントに当たれば貫通して中の人がヤバそうだ。
雨風の強い時のテントの撤収方法は、書籍とネットで学んだ。晴れしか行動しないつもりだったので、まさか実践で行うとは夢にも思わなかったが…まあやってみよう。

テントの中でカッパを着てテント以外の全てをザックにパッキングし、ザックカバーをかけておく。天蓋の中にあるファーストエイドや行動食をザック本体の中に移し空にしておく。ザックをテント内に残して重石代わりにして外に出る。張り縄の固定を外すとテントは強風にあおられてフラワーロックの様にブルンブルン暴れ出した。骨組みを抜き、テントをぐちゃぐちゃに丸めて全てをゴミ袋に押し込んで天蓋の中に入れて完了。普通テントはザックの一番下なんだけどこの場合はしょうがない。なんとか成功。
経験も無く、先輩も無しの書籍とネットの知識だけの『頭でっかち』のオレでもできたよ、ありがとう!師匠!(師匠=本とネット)←さみしいヤツ

ザックを背負い、あたりを見回すが、荷物があれどカップルがいない。
見上げると斜面の上の方まで吹き飛ばされた彼女のテントを二人で追いかけていた。あらららら…。
by moriyart | 2014-09-12 00:22 | 白馬三山