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どこかに行きたい

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雲取山

くもとりやま?

なんか変わった名前だ。なんの意味があるんだろうと調べてみた。

『修験道の道場として知られる大雲取山が熊野にあり、この山も修験道場であったことからその名をとったもの』

だ、そうだ。和歌山県?ずいぶん離れているが、こんなに離れていても遥々名前が移ってくるってすごいなあと思った。
『雲を取れそうなほど高い山』
なーんて浅はかな名前の予想ををしていたオレはやっぱり幼稚だ。


鼻炎の薬のせいなのか、雲取山へ向かうときに どうにも眠たい。一度だけほんのちょっと記憶が飛んだ。あぶね、安全運転安全運転。
深夜に登山者用駐車場に到着。身支度もそこそこに運転席に丸くなって寝た。

5時ちょっと前、周りの車のドアをバタバタ閉める音で目が覚めた。しまった、目覚ましをかけるのを忘れた。本当は4時半に起きて5時に出発する予定だったのに。
両神山で逢った親子から『雲取山は道中が長くて時間がかかる』という情報を聞いていて、さらに調べてみれば雲取山は基本、一泊で行く山らしい。健脚な人でなおかつ早朝出発なら日帰りも可能と書いてあった。
いそいで仕度をする。
歯磨きをしながら隣の車に何気に目をやるとハデな傷が。
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あーあーやっちゃったね。なんて見ていたらなんか変。傷が新しい。覗きこんで見れば薄い塗膜片がめくれ上がっている。フッと息をかければ剥がれそうな感じだ。
という事はこの傷をつけたのはつい今さっきという事になる。もちろん当てたのはオレじゃないんだけどね。
当て逃げ?えーヤダなあ。オレが疑われちゃうとかならイヤだなぁ。でもオレの車に一切傷が無いから当てたのはオレじゃないってわかると思うけどさぁ。
車を移動させようかと思ったけど、すでに満車気味。それにいちいち動かせばかえって疑わしいので午前5時10分、そのまま出発した。
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最初は林道。というか車道だ。当たり前だが歩きやすい。
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路側帯に登山者と思われる車が。
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100m程歩くと登山道入り口があった。そこからは見なれた土の登山道。
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しばらくは森の中。植林されたと思われる杉林だ。花粉の時期で花粉症の人が歩いたら即死してしまうであろう。

時々森が開けて空が見える。晴れてるんだけど霞がかかっている。
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なんか変わった草が生えていた。羽を広げた鳥の様。
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太陽が登ってきて木漏れ日を道に落とす。こういう景色好きだ。
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巻き道か、尾根沿いか。
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尾根沿いでしょう。きっと景色いいし。
…と言いたいが、森林限界を超えないので巻き道でも尾根沿いでも大して景色が変わらない。とりあえず小屋がある方へ行こう。

それでもだんだん空が広く見えるようになった。足を止め、日焼け止めを塗った。
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午前7時半、『七ッ石小屋』へ到着。トイレを借りた。
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しっかりと籠った。しっかりとペーパーも使ってしまったので、追加でお金を入れてきた。小心者だなぁ、オレ。

七ッ石小屋を出てしばらく歩くと開けた尾根に出た。
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森林限界を超えているわけでは無くて、あえて木を生やさない『防火帯』なのだそう。木をなくすことで、ここで延焼を食いとめるのだろう。
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雲取山の他の人の記録を見ると、ちょくちょく出てくる『ダンシング・ツリー』
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木の形が踊っているかの様なのでこの名前が付いたんだろう。一目でわかったんだけど、なんか『ふーん…』だった。そりゃウネウネ本当にダンスしてたらびっくりしておしっこ漏らしちゃうんだけどさ。

尾根をどんどん登って行くとさらに拓けた場所あった。ヘリポートとテン場がある。
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あーここけっこういいかも。張ったままのテントや撤収中のテントがいくつかあった。
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すこし奥には小屋もあり、ベンチで休んでいる人もいた。
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尾根道に入ってから下山する人とすれ違う様になった。いつもの様に挨拶するのだがサラっと無視されること数回。
最初はアレ?と立ち止まって振り返って無視した人を見たりもした。
ここの山以外で挨拶をして無視をされるのは全体で1回か2回程度。
聞こえない事も無いとは思うけど、今度はワリとハッキリ大きな声で言ってみる。

ぉ…ょぅ…ッス
やっとごにょごにょ小さい声で返ってくる程度だ。

ここの山の人達は日本人じゃ無いのか または”挨拶を返すと死んでしまう病気”にでも罹っているのか…。

(この人、返してくれるかな)
なんて願いながら声をかけても華麗に無視。深く被った帽子のつばの奥から目だけ動かして相手の表情をうかがう。
ピクリとも表情を変えずにすれ違う。突然声をかけられたらこっちを見るか、表情くらいは変わりそうなんだけどなあ。
見事なスルースキルだ。

10人中4人くらいが無視をする。全体の40%。他の山なら下りてくるまでに1~2人だ。全体で言ったら0.001%とかだろう。この差はいったいなんなのか。
若い、年寄り、おとこおんな関係無くどの年齢層でもスルー族はいる。

だんだん苦しく悲しくなってきた。こうも無視されると精神的にくる。何人か連続で無視されてかなり弱ってきた。気が付けば前から歩いてきた家族の中に元気良さそうな小学生がいる。声をかけた。

華麗にスルー

撃沈。藁にもすがる思いでおばちゃん集団に声をかけるもほとんどの人がスーパースルー。


そんなことを繰り返しているうちに、気分は沈み、背中は丸くなり、足元ばかりを見て歩くようになってしまった。
また前から歩いてきた人に挨拶してみるが、こっちの声まで小さくなってしまう。そして返って来ない挨拶。
追い詰められる様な感じで精神はボロボロになってきた。

たいりょく
416/500 ■■■■□


せいしんりょく
45/500 □□□□□

もう『せいしんりょく』のゲージは赤くなった。無視というのがこんなにもダメージがデカく、気持ちを沈めてしまう力がここまで強いとは…。自分の子供にはこんな気分は味あわせたくないものだ。


そう思っていれば前からトレランの若い衆がやってくる。
見るからに体育会系でゴリゴリのマッチョだ。
どう見ても体育会系だし、彼ならきっとオレに挨拶してくれるに違いない。
挨拶砲の射程圏内に入った。さあ!オレに最高の挨拶を返しておくれ!


『こんに「こんちわーッス!」

こんなに素晴らしい『こんにちは』は何時間ぶりだろう…爽やかで、ハッキリしていて、音圧を感じる程大きくて。

キラキラと輝く挨拶のシャワーを全身に浴びた。あごを上げ、そっと目を閉じ、恍惚な表情をした。心の中で(はぁああん♡)となったのは言うまでもない。

赤くなっていた精神力のゲージは大幅に回復。

たいりょく   
415/500 ■■■■□


せいしんりょく 
335/500 ■■■□□



そうだなぁ、元気のいいオバちゃん集団の明るい『こんにちは』ならさらに回復率が高いかも。
んで、大学生くらいのおねぇちゃんの『ふにゃふにゃした声』のカワイイ挨拶なら(この感性わかる人おる?)完全回復に加えてステータスボーナスが付くこと間違いない。

精神力+10%
妄想力+5
やる気(何のだよ)+5

あたりだろうか。


それでも何人かは、気持ちのいい挨拶を返してくれるので、そのたびにやる気を復活させて進んでいく。
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遠く山の上に避難小屋が見えるようになった。山頂は近い。
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立派な避難小屋と、山頂付近なのにキレイなトイレ。さすが東京都、至れり尽くせりだ。
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by moriyart | 2016-05-28 05:54 | 雲取山