2016年 08月 07日
その3(大喰岳・槍ヶ岳)
二日目。
3時に起きて身支度を整える。
食パンとスープ。雨が上がっているが、辺りはビシャビシャ。テントもビシャビシャ。おまけに結露でテント内も濡れている場所がある。予想はしていたが、面倒な撤収になりそう。
まだ少し撥水作用が残っていたのでテントをたたいて水の玉を払い落とす。バンダナである程度水気を拭いたけど、面倒くさくなってそのままテントを丸めて大きなビニールにすべて放り込んでザックに詰めた。
5時ごろ出発。
まずまずな天気だ。それでも午前中勝負だろう。細めの登山道を歩いていく。
昨日まで割と平坦な道だったけど、今日は道の勾配がけっこうある。
ぐいぐい高度を上げていく。ペースも落ちる。
そして7時40分、ついに槍ヶ岳がその姿を現した。
とんがっているなぁ。きれいな三角形だ。ガスに覆われたりスカッと晴れたりを繰り返している。
殺生ヒュッテから先はジグザグの上り坂。最後の頑張りどころだ。道の折り返しまで来てターンをするたびに槍ヶ岳が大きくなっていく。ワクワク度も大きくなる。
オレらの後ろを登ってくるお姉さんだらけのパーティがやたらとテンションが高くて、さっきからずっとキャッキャウフフしている。ジグザグ道をターンして槍ヶ岳が見える向きになるたびに『槍さまー、槍さまー!』騒いでいる。
オレは疲労と酸欠で脳がバカになりかけているので『槍様~!』を『槍Summer!』で脳内変換して『槍Summer!2016』とひそかにウヒウヒ盛り上がっていた。バカだね。
最後のターンをしてから『もう我慢できない!』と走り出し、長い坂を一気にダッシュして駆け上がる。坂の途中にいたワンゲル部の最後尾の若者がモーレツに駆け上がってくるオレの姿に気が付いて何を思ったか突然駆け出した。
オレに釣られただけなのか、抜かれまいと奮い立ったか。
そんなオレとは対照的にゆっくり小幅な足取りで登ってくる組長を坂の終点で待ち、登り切ってから互いに労いの握手をした。
おつかれ。
さっそく槍ヶ岳山荘でキャンプ地の受付を済ませた。ここのテン場は完全場所指定。早い順に立地の良い場所から割り振ってくれる。
前回は8-1で密集地だったけど、今年は『C』。密集地から離れてなおかつ常に槍ヶ岳を真正面に見ることができる最高の場所だった。ありがたい。
ただ、そこは超巨大な傾斜している一枚岩の下なので震度6以上で二人もろとも3cm以下のぺっちゃんこになれます。ダイエットいらず。
昨日の雨で濡れているテントを乾かしながら幕営し、槍ヶ岳の頂上へ行くための準備をする。その間、槍ヶ岳はガスに完全に覆われてまったく見えなくなったりスカッと晴れて全貌を表したり…山の天気って移り変わりが早いわ。
『早く行こうぜ!もう我慢できない』と組長を急き立てる。せっかく来たんなら天気がいいときに登りたいもんだ。 『おれは自称晴れ男だから信じろ』と返す組長。
槍ヶ岳の肩から穂先をながめる。
よく目を凝らすと最後の梯子に何人かとり付いている。いまが絶好のタイミングみたい。
逸る気持ちを抑えながら槍をバックにパチリ。
そしていざ、クライムオン。
今までと違って手を使い、よじ登るところばかり。みんなよじよじしている。今回はこわごわ登っている人が多くて渋滞が発生していた。こんな場所で煽ってもダメなのでじっと我慢して待つ。
最後の梯子に三人しがみついていた。
梯子は基本一人だけのはず。後ろのパーティの兄ちゃんが『梯子は一人ずつですよ~』と控えめに指摘していた。
オレはこの山二度目だし、最後の梯子は組長にお先にどうぞと登ってもらった。
11時50分、槍ヶ岳山頂へ到着。
山頂で二人でハイタッチ。二人ともよく頑張りました。
しばらく山頂からの景色を堪能。若干雲が多めなので近景は見えるが彼方の山は見えない。
明日に期待をして10分ほどで下山を開始する。
下りの梯子にとりついた組長に『出ぞめ!出初め式!』と声をかけたら
やってくれました。あぶねーよ、9mあるんだから。
帰りも渋滞。我慢の待ち。
12時20分、山荘に帰ってきた。
そして当然コレでしょう。達成した後のビールはやっぱ格別ですわ。飲まないと死んじゃうわけでもないのに何かにとりつかれているのだろうか。妖怪のんべえ。
その後テントに戻り、軽く食事して再び支度をする。
オレの本来の目的、『大喰岳』へのアタックを開始する。
…とは言うものの、すぐ隣の山…というか稜線上のピークなのでそんなに大変じゃない。ちょっとした散歩みたいなもんだ。
向かう途中ですれ違ったパーティの一人が、『この先でライチョウの親子がいますよ』と情報をくれた。
向かってみればいましたいました。母鳥とヒナ4羽。まだひよっ子でピーピー鳴いている。
(あっかわいい…♡)
思わず口から出た。40超えた坊主頭のオッサンが女子語を話すと気持ち悪さが3000メートル級である。
その後、大喰岳山頂ををトラバースしてしまっているので、山頂まで戻った。
14時、日本標高順第十位『大喰岳』に登頂。3101m
第十位、埋まりました。あと残りは 間ノ岳、悪沢岳、赤石岳。全部南アルプスだ。間ノ岳は今年予定してるんだけど、赤石がなぁ…遠いんだよなぁ…。ちなみに槍ヶ岳は3180mで5位。
大喰と書いて『おおばみ』。一見『おおぐい』と読みそうなんだけど おおばみ。
オレも組長も大食漢なのでどちらかと言えば『おおぐいだけ』の方がふさわしいかもしれない。ゆえにこの山はオレたちの山。(なんじゃそれ)
山の名前は読み方が難しいモノが多い。『双六岳』を『そうろく』と読んでいた。双六って当て字でも何でもなく普通に”すごろく”って読めるはずなんだけど、勘違いボーイのオレはずっと『そうろく、そうろく』言っていた。
しかも見ず知らずの登山者にも『あの山がそうろく岳で~』なんて言ってたから恥ずかしいったらありゃしない。恥の高さは8000メートル級であった。顔から火が出るくらい恥ずかしいっつうことで火山だね。(意味フ)
ガスガスで景色の見えない大喰岳を後にした。
15時くらいにテン場まで戻ってきて一休み。
なんかもうちょっと飲みたくなっちゃった。(のんべえ)
『ちょっくら酒飲んでくるよ』と一人でテン場を離れ、水を汲みに来たついでに山荘でチューハイを買ってベンチに腰掛けて飲んだ。持ってきた行動食の柿の種をつまみに槍ヶ岳をながめ……いや、ガスに覆われてまったく見えない。仕方ないので真っ白な世界を見ながらグビグビやった。
テントに戻り、この後降る雨の前に食事を終わらそうということで16時前から夕食をとった。今日は全部お湯で戻すカレーライス。ちょっと味気なかった。
その後、天気予報は裏切らずパラパラと雨が降り出した。また濡れテンか…。でも行動中は一切降らなかったからラッキーとしよう。運が悪いと穂先に登れずに帰らなければならないし、実際そんな人かなりいるし。
そんな事考えていたらいつの間にか寝ていた。
午前2時。目が覚めた。
雨が上がっているみたいだ。テント内の結露があいかわらずなので外気でも入れれば多少はマシになるかとフライシートの入り口を全開にしてみる。空は快晴。満天の星空、冬の星座が出ていた。
冬の天の川は光が弱くて見えづらいハズなんだけど、これだけ標高が高いと光を弱める大気が薄いせいかしっかり見える。
入り口を全開にして寝ながら真上を見ると空が見えるので、寝袋で横になりながらずっと星空を眺めていた。
しばらく起きてたんだけどウトウトし始めた午前3時ちょうど、隣のテントから『ペール・ギュント』の『朝』が大音量で流れた。
朝の3時に容赦ナシかよ。豪快すぎるぜ、組長さんよ。EとFの区画のテントの住人は何事かと思ったに違いない。
まあ、山の朝は早いというから…いいのか。
…いいのか?
.
3時に起きて身支度を整える。
食パンとスープ。雨が上がっているが、辺りはビシャビシャ。テントもビシャビシャ。おまけに結露でテント内も濡れている場所がある。予想はしていたが、面倒な撤収になりそう。
まだ少し撥水作用が残っていたのでテントをたたいて水の玉を払い落とす。バンダナである程度水気を拭いたけど、面倒くさくなってそのままテントを丸めて大きなビニールにすべて放り込んでザックに詰めた。
5時ごろ出発。
まずまずな天気だ。それでも午前中勝負だろう。細めの登山道を歩いていく。
昨日まで割と平坦な道だったけど、今日は道の勾配がけっこうある。
ぐいぐい高度を上げていく。ペースも落ちる。
そして7時40分、ついに槍ヶ岳がその姿を現した。
とんがっているなぁ。きれいな三角形だ。ガスに覆われたりスカッと晴れたりを繰り返している。
殺生ヒュッテから先はジグザグの上り坂。最後の頑張りどころだ。道の折り返しまで来てターンをするたびに槍ヶ岳が大きくなっていく。ワクワク度も大きくなる。
オレらの後ろを登ってくるお姉さんだらけのパーティがやたらとテンションが高くて、さっきからずっとキャッキャウフフしている。ジグザグ道をターンして槍ヶ岳が見える向きになるたびに『槍さまー、槍さまー!』騒いでいる。
オレは疲労と酸欠で脳がバカになりかけているので『槍様~!』を『槍Summer!』で脳内変換して『槍Summer!2016』とひそかにウヒウヒ盛り上がっていた。バカだね。
最後のターンをしてから『もう我慢できない!』と走り出し、長い坂を一気にダッシュして駆け上がる。坂の途中にいたワンゲル部の最後尾の若者がモーレツに駆け上がってくるオレの姿に気が付いて何を思ったか突然駆け出した。
オレに釣られただけなのか、抜かれまいと奮い立ったか。
そんなオレとは対照的にゆっくり小幅な足取りで登ってくる組長を坂の終点で待ち、登り切ってから互いに労いの握手をした。
おつかれ。
さっそく槍ヶ岳山荘でキャンプ地の受付を済ませた。ここのテン場は完全場所指定。早い順に立地の良い場所から割り振ってくれる。
前回は8-1で密集地だったけど、今年は『C』。密集地から離れてなおかつ常に槍ヶ岳を真正面に見ることができる最高の場所だった。ありがたい。
ただ、そこは超巨大な傾斜している一枚岩の下なので震度6以上で二人もろとも3cm以下のぺっちゃんこになれます。ダイエットいらず。
昨日の雨で濡れているテントを乾かしながら幕営し、槍ヶ岳の頂上へ行くための準備をする。その間、槍ヶ岳はガスに完全に覆われてまったく見えなくなったりスカッと晴れて全貌を表したり…山の天気って移り変わりが早いわ。
『早く行こうぜ!もう我慢できない』と組長を急き立てる。せっかく来たんなら天気がいいときに登りたいもんだ。 『おれは自称晴れ男だから信じろ』と返す組長。
槍ヶ岳の肩から穂先をながめる。
よく目を凝らすと最後の梯子に何人かとり付いている。いまが絶好のタイミングみたい。
逸る気持ちを抑えながら槍をバックにパチリ。
そしていざ、クライムオン。
今までと違って手を使い、よじ登るところばかり。みんなよじよじしている。今回はこわごわ登っている人が多くて渋滞が発生していた。こんな場所で煽ってもダメなのでじっと我慢して待つ。
最後の梯子に三人しがみついていた。
梯子は基本一人だけのはず。後ろのパーティの兄ちゃんが『梯子は一人ずつですよ~』と控えめに指摘していた。
オレはこの山二度目だし、最後の梯子は組長にお先にどうぞと登ってもらった。
11時50分、槍ヶ岳山頂へ到着。
山頂で二人でハイタッチ。二人ともよく頑張りました。
しばらく山頂からの景色を堪能。若干雲が多めなので近景は見えるが彼方の山は見えない。
明日に期待をして10分ほどで下山を開始する。
下りの梯子にとりついた組長に『出ぞめ!出初め式!』と声をかけたら
やってくれました。あぶねーよ、9mあるんだから。
帰りも渋滞。我慢の待ち。
12時20分、山荘に帰ってきた。
そして当然コレでしょう。達成した後のビールはやっぱ格別ですわ。飲まないと死んじゃうわけでもないのに何かにとりつかれているのだろうか。妖怪のんべえ。
その後テントに戻り、軽く食事して再び支度をする。
オレの本来の目的、『大喰岳』へのアタックを開始する。
…とは言うものの、すぐ隣の山…というか稜線上のピークなのでそんなに大変じゃない。ちょっとした散歩みたいなもんだ。
向かう途中ですれ違ったパーティの一人が、『この先でライチョウの親子がいますよ』と情報をくれた。
向かってみればいましたいました。母鳥とヒナ4羽。まだひよっ子でピーピー鳴いている。
(あっかわいい…♡)
思わず口から出た。40超えた坊主頭のオッサンが女子語を話すと気持ち悪さが3000メートル級である。
その後、大喰岳山頂ををトラバースしてしまっているので、山頂まで戻った。
14時、日本標高順第十位『大喰岳』に登頂。3101m
第十位、埋まりました。あと残りは 間ノ岳、悪沢岳、赤石岳。全部南アルプスだ。間ノ岳は今年予定してるんだけど、赤石がなぁ…遠いんだよなぁ…。ちなみに槍ヶ岳は3180mで5位。
大喰と書いて『おおばみ』。一見『おおぐい』と読みそうなんだけど おおばみ。
オレも組長も大食漢なのでどちらかと言えば『おおぐいだけ』の方がふさわしいかもしれない。ゆえにこの山はオレたちの山。(なんじゃそれ)
山の名前は読み方が難しいモノが多い。『双六岳』を『そうろく』と読んでいた。双六って当て字でも何でもなく普通に”すごろく”って読めるはずなんだけど、勘違いボーイのオレはずっと『そうろく、そうろく』言っていた。
しかも見ず知らずの登山者にも『あの山がそうろく岳で~』なんて言ってたから恥ずかしいったらありゃしない。恥の高さは8000メートル級であった。顔から火が出るくらい恥ずかしいっつうことで火山だね。(意味フ)
ガスガスで景色の見えない大喰岳を後にした。
15時くらいにテン場まで戻ってきて一休み。
なんかもうちょっと飲みたくなっちゃった。(のんべえ)
『ちょっくら酒飲んでくるよ』と一人でテン場を離れ、水を汲みに来たついでに山荘でチューハイを買ってベンチに腰掛けて飲んだ。持ってきた行動食の柿の種をつまみに槍ヶ岳をながめ……いや、ガスに覆われてまったく見えない。仕方ないので真っ白な世界を見ながらグビグビやった。
テントに戻り、この後降る雨の前に食事を終わらそうということで16時前から夕食をとった。今日は全部お湯で戻すカレーライス。ちょっと味気なかった。
その後、天気予報は裏切らずパラパラと雨が降り出した。また濡れテンか…。でも行動中は一切降らなかったからラッキーとしよう。運が悪いと穂先に登れずに帰らなければならないし、実際そんな人かなりいるし。
そんな事考えていたらいつの間にか寝ていた。
午前2時。目が覚めた。
雨が上がっているみたいだ。テント内の結露があいかわらずなので外気でも入れれば多少はマシになるかとフライシートの入り口を全開にしてみる。空は快晴。満天の星空、冬の星座が出ていた。
冬の天の川は光が弱くて見えづらいハズなんだけど、これだけ標高が高いと光を弱める大気が薄いせいかしっかり見える。
入り口を全開にして寝ながら真上を見ると空が見えるので、寝袋で横になりながらずっと星空を眺めていた。
しばらく起きてたんだけどウトウトし始めた午前3時ちょうど、隣のテントから『ペール・ギュント』の『朝』が大音量で流れた。
朝の3時に容赦ナシかよ。豪快すぎるぜ、組長さんよ。EとFの区画のテントの住人は何事かと思ったに違いない。
まあ、山の朝は早いというから…いいのか。
…いいのか?
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by moriyart
| 2016-08-07 11:36
| 大喰岳