どこかに行きたい

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その2(焼岳)

このあたりから地面のあちこちから蒸気が噴出している。
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もう普通に登山道のすぐ脇から出ていて、特に近寄れないような措置をしてあるわけでもない。
噴き出している所の地面を見るとこぶし大の穴ぼこが開いていた。
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のぞいてみるも深い穴で底が見えない。辺りは”あのオナラの様な”硫化水素のにおいがするんだけど特別この穴から強いにおいは感じない。
手をかざしてみる。あれ?思ったより熱くない。もうちょっと穴に手を近づけてみた。

あっつ!!!

あっちぃ!やっぱ100℃近くあるわ。びっくりしたぁ。
ホントに何気ない場所に噴き出し穴があって、転んで手や顔が穴に入ってしまえば大やけどを負ってしまいそう。夜間の登山は絶対危なそうな感じだ。
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進むにつれて蒸気が出ている穴が増えていき、吹き出す量も多く高くなっていく。
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もうすぐ山頂だ。
時折やさしく吹き抜けるキンと冷えた風がめっちゃ心地いい。秋の登山ってコレがいいんだよなぁ。
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景色がいいけど、道に斜度が付いてきてけっこうキツイ。ゼーゼー息を切らしながら登っていく。

道のずっと上の方で3人の若い男女のパーティが岩に寄りかかって休憩している。すごく開けた場所なので騒いでいる声が周囲に響き渡る。近づくにつれて何か楽しそうに言い争っている。
『オスプ〇イは落ちないよ』
『いや落ちるって』
『いやいやオス〇レイは落ちません』
最後に女の子が声を張り上げて、
『オ〇プレイは落ちませぇーん!!』
と、主張していた。

その主張が終わったころにオレがそのパーティに追いつき、こんちわと挨拶をして目の前を横切っていく。
そのときに、『オスプレ〇は落ちないと思いますよ』とついつい言ってしまった。
『ほらぁ!やったぁ!これで2対2だねっ!』
女の子が歓喜し、他の男女が笑っていた。

けっきょく何の言い争いなのかはさっぱりわからん。
『未亡人せーぞー機』などと何かと批判が多い機体で、常に政治的何かが付きまとうこのかわいそうな飛行機。オレは〇スプレイには肯定も否定もしないけど、できれば落ちてほしくないのでそんな願いを込めてオレは”落ちない”を選択した。

あ!
もしかしてアメリカのザックのメーカーの『OSPREY』のこと言ってんのかな?落ちるんじゃなくて『堕ちぶれる』とかの意味だったとか…。足を止めて首を傾げる。

いや、考えすぎだわコリャ。




山頂のすぐ下まで来た。
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安房峠の 中の湯からの登山道とここで合流する。やっぱそっちから登ってくる人が多くてここから先は けっこうな人数がいる。ってかこの人数分の駐車スペースって絶対無いはずなんだけど、さてはみんな路駐だな、きっと。
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山頂まであとちょっとというところで蒸気が噴き出している場所があった。
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硫化水素が変化したものなのかわからないが、硫黄のような物が岩について黄色くなっている。
なんか雰囲気ヤバそう。そしてついに、

8時50分、焼岳北峰山頂に到着。
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だいたい4時間で登れました。まあこんなもんでしょう。
南峰は現在立ち入り禁止だ。崩落の危険がある為らしいが、北峰から眺めると南峰の山頂に人影が見えた。
こらこら、いかんぞ。
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山頂はそこそこ広い。ちょっと傾斜してるけどかなりの人数が休むことができそう。
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山頂からの景色はスンバラシイの一言。穂高連峰を奥行きを感じるビューで槍ヶ岳まを眺めることができる。穂高どころか左右に広がる笠ヶ岳から常念方面なんかもパノラマで楽しめる。超ダイナミック。

南側にはすぐ隣の山、『乗鞍岳』が見える。
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視線を動かすと焼岳のお釜、火口湖も見える。
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爆裂火口も見えるけど角度的に底が見えない。それがまたちょっと怖い。

山頂からの絶壁の下には何やら黄色い一帯が見え、周辺は蒸気が噴出していた。
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後で行ってみよう。

後を振り返ると岬の様に突き出た岩があった。
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登ってくれと言わんばかりの雰囲気を出しているので、近くのおねぇちゃんに頼んで写真を撮ってもらった。
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なんか宝剣岳の山頂の岩みたいだけど、あっちよりかは登りやすい。そのかわりてっぺんは非常にせまく尖っているので足の置き場が無い。左足なんかつま先が上を向くような置き方しかできなくて超不安定。
立ち上がるとグラグラしてしまって危ないんだけど、ヘンな脳内麻薬が出てしまっているので立ってみた。
そんな危なっかしいオレの立ち上がる動作を見たおねぇちゃんとその仲間たちがキャーと声を上げた。

撮ってもらってカメラを受け取ってお礼を言って別れる。
『わたしたちも行ってみよう』とおねぇちゃんたちが岩に近づいて登ろうとしている。

『えっ私コレ無理。絶対ヤバいって。ってかさっきのオジサンすごい!おかしい!

おかしい言うなし…。
そして20代の若い子達にもいよいよ”オジサン”と言われるようにもなったか。ちょっと前くらいまで子供から言われてたけど、ついに成人超えた人からも”おっさん”認定されましてうれしい限りですわ。(遠い目)
あと数年もすりゃ”クソジジイ”に昇格するでしょう。

前々から薄々そうかなーって思ってたけど、高所の恐怖の感じ方が人よりちょっと鈍いかも。要するにドンカンっちゅうことだ。良い事なのか…悪い事なのか…。
ま、無謀なことをしてアホな死に方をしない様に気を付けますよ。



まだ9時なんだけどご飯食べている人が多かった。オレも朝飯から5時間近く経っているので、持ってきたカリカリ梅のおにぎりを穂高を見ながら食べた。
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食べ終わってから山頂から見下ろした場所にある蒸気がたくさんでいている場所へ移動した。
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地面に穴ぼこがあちこちに開いていて、蒸気が噴き出している。硫黄成分でも出ているのか 周りの岩が薄黄色に色づいている。
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穴をのぞき込んでみても内部がどうなっているかわからない。
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カメラのフラッシュを焚いても穴の底なんて見えやしない。
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焼岳の他の人の山行記録をいくつか見ていると何人かは この蒸気を利用して『温泉たまご』を作っている人がいた。
なのでオレもチャレンジしてみようと いろいろ用意してきた。

ネットに玉子を入れ、ひもで吊ってさっきの穴に入れてみる。
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そのネットとはキッチンの排水かごに被せるネットであった。新品とはいえ、残飯用ネットを使うところがなんか ぶしょったくてオレらしいクオリティだ。いいのいいの、これもオレの人間性。

腕時計を見て時間を計る。オレの予想では10分でできる。
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待っている間、景色を見たり訪れる人を観察したり…。
一眼を首から下げたおねぇちゃんがやってきて黄色く染まった岩や蒸気が噴き出す穴を一生懸命パシャパシャ一眼で撮りまくっている。
ファインダーを覗いたまま移動して撮っていると、そのうち足元の穴に半分入っているネットに気が付いて、ファインダーから目を離し肉眼でのぞき込む。(なんだろう)なんて思ったんだろう。目を見開いてネットをのぞき込む。
そのネットのすぐわきのオレの足に気が付いて目を見開いたまま顔を上げてオレの顔を見る。
『温泉たまご作ってるんです』
そう言うとさらに目をまんまるにして驚いていた。
ネットではわりとポピュラーなんですと説明したが、彼女は知らなかった。ってかこんなことやってる人は周りを見てもオレしかいない。
『良い温泉たまごができますように~』
そんなお言葉をもらっておねぇちゃんが下りて行った。



10分経過。
失敗してたら恥ずかしいので岩の陰に移動して殻を剥いてみる。おっ!なんか良さそう。
白身の一部がトロトロしてる部分がある。一口かじってみた。
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黄身が半透明だ。ギリギリ個体な状態。大成功!
かじった玉子を撮るのはちょっと下品だけど、中の具合を記録したかったのでカンベンね。

小袋に入れてきた塩を取り出してまぶしてからもうひとかじり。
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うんまいなぁ…。
半分かじった玉子を空にかざしたりしてニヤニヤしながら成功を喜んだ。一人コソコソ岩の陰に隠れてなにやってんだか。
でも山の上で温泉たまごを作って食べるだなんておいしく楽しいイベントをすることができた。ネットで情報をくれたみなさんに感謝です。今度はもっとトロトロな状態でラーメンに入れたいなぁ。絶対ウマイよきっと。ウマすぎておしっこ漏らすよ。

温泉たまごも食べて満足したので10時前に下山をはじめた。
まだ午前なので登ってくる人が多い。しかし中の湯方面や上高地から登ってくる人ばっかで、オレが登ってきた中尾方面はやっぱりマイナーなのか、あまり人に逢わなかった。
森林限界より下がるとさっきの岩っぽい雰囲気からガラっと変わり、森の中へ。



もうすぐ駐車場ってところにあった温泉を採取する所。
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今朝は真っ暗闇で湯気しか見えなかったけど、こんな感じだったんだ。
なんか雰囲気あって好き。”蒸気機関”って感じでカッコいい。 いやでも機関部分とか無いじゃん。いいの、雰囲気雰囲気。

そんなこんなで12時半、駐車場へ戻ってきた。活きている火山から生きて還ってこれました。まさに生還。
いやぁ楽しかったYO!



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by moriyart | 2016-10-21 21:50 | 焼岳