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どこかに行きたい

moriyart.exblog.jp

毛無山

『毛無山』

なんてせつなく儚い響きがするんだろう。
頭の外観にコンプレックスをもつ者の聖地として全国各地にその名の山が20とも30とも在ると言われている。
そのたくさんある毛無山のなかでいちばん標高が高いトップ・オブ・ハg…いや毛無しが、なんと我が静岡県にあるというので、毛無しの関係者として『聖地巡礼』を試みる。


まさか乾徳山下山後の翌週も山に行けるなんて夢にも思わなかったので、お許しが出てから大急ぎで支度をした。
カミさんのスマホにも届く登山届の写しをカミさんが確認すると、『いつもは何ていう山を登っているのか忘れてしまうけど、今回は忘れないと思う』などと笑いながら言う。どーしてなのー?

今回も夜に自宅で普通に寝て、真夜中に起きてから出発した。
前回よりか道のりが近いので、出発もちょっと遅い。途中、コンビニで早い朝めしを済ませてから朝霧高原へ向かった。

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まだ暗いが、『道の駅 朝霧高原』に到着した。
トイレを済ませ、道の駅ゆえに住宅街の駐車場よりかは なんとなくアイドリングしていても怒られ無さそうなので暖房をかけて朝までの時間をつぶしていた。
同じような車がたくさん停まっていた。そしてずっと前からここに居るのだろう、氷点下5℃なので、それらの車は真っ白く霜に覆われている。

少しここで寝ようかと思ったが、あまり眠くない上に暖房をかけていても寒い。早く出れば早く帰ってこれるし、今日の行程も長いから暗い今でも出発しようと決意して車を移動した。


車を停めた場所から草原をしばらく歩く。
日の出前なので真っ暗だ。ヘッデンを灯して歩いて行く。
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自分が息を吐くたびにヘッデンに照らされて視界が真っ白になる。さすが氷点下5℃。
草に付いた霜にライトの灯りが反射してダイヤモンドのようなギラギラした光を放つ。
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静かだ。
もう虫なんていないから地面の上に動く生き物の気配なんて全く無いし、鳥すら寝ている時間帯なのか鳴き声も羽ばたく音もしない。自分の足音と呼吸の音だけ聞こえる。
立ち止まると無音になり、耳鳴りがしそう。

こ…怖い…


つい最近、ネットの書き込みで、目に見えない”そういうモノ”は圧倒的に川や山にいる…というのを読んだのを急に思い出してしまった。見えないだけで今、自分の周りにたくさんいるのかもしれない…と、怖くて怖くてしょうがなかった。
おばけとかは信じていないつもりだったが、時々こういう心理状態になってしまう様になった。

(あ…面白い景色だ)
暗がりの中でカメラを構えるも、(なんか写ってはイケナイのが写っちゃったらイヤじゃん!)と急に思い直し、カメラをしまってしまう、超チキンなオレが今、ここにいる。
ついでに熊も怖かった。おばけと熊のダブルの恐怖で、(なんで暗いうちに出発しちゃったんだろう…)と後悔しまくっていた。


後ろを振り返ると、白んだ東の空にシルエットで浮かび上がる富士山。
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徐々に明るくなってきて、辺りが見えるようになってきて一安心。あとは明るくなる一方だからもう大丈夫かなぁ、5時台だし。
なーんて希望を持ちながら歩いていたら森へ突入。光が遮られ、再び真っ暗になった。
気配は無いんだけど、木々の間から何かがこっちを見てたら怖いから横を向けない←超チキン

目の前の低い枝にとまっていた鳥ちゃんがオレに驚いて飛び立った時には死ぬほど驚いた。本当にビビった時は声すら出ないってのはホントだった。

6時前頃からは普通の朝になり、林の中に入っても朝だというのが認識できた。
見上げると、今から登る『毛無山』。
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なんだかさっきまで さんざん怖がっていたのがアホらしくなってきた。遠くの建物に電灯が灯り、道に車の往来を確認すると急に人の存在を感じるようになった。カラスの群れがカーカーと騒がしく鳴くと、もうしっかり朝で、あれだけ感じていた恐怖はどこかに行ってしまった。

6時過ぎ、シルエットだった富士山に色が着いていく。
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だだっ広い広場に点在するテントたち。
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あー、ここが『ふもとっぱらキャンプ場』か。
今年だったかな、ここで長渕剛の10万人ライブやったんだよね。ホントに広いなぁ。

辺りは霜で真っ白、テントもバイクも真っ白。
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氷点下の世界だ。オレの持っているテン泊装備じゃ凍えてしまうだろう。寒冷地用の寝袋が必須だね。

すでに外に出て焚火に当たっているライダーもいた。
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黙って真正面に見える雄大な霊峰富士を見つめている。
ソロのライダーが多かったけど、仲間で固まってテントを張っているグループもいて、こんなに寒いのに楽しそうな会話が聞こえる。

キャンプ場横を通り過ぎるとアスファルトの道が出現し、一気に里の雰囲気になった。
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舗装路の行き止まりまで来た。
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ここからやっと他の登山者に遭遇するようになった。
(この人も聖地巡礼なのかな)
失礼だが頭部を見上げてしまう。フサフサだった。
(違うじゃねーか…部外者は聖地から帰れ)
バカな事を心でつぶやいて一人で盛り上がっていた。
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『金山の精錬場跡』があった。
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江戸時代までここは『富士金山』として採掘されていたという。
そのなごりとして採掘跡や破砕機が残っている。

毛無山一合目を通過。
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行程の目安としてはいいが、あと残りがどれくらいかがわかってしまうので知らない方がいい場合もある。人によっては何合目と書かれた札は好みが分かれて賛否両論だろうなぁ。

毛無山を調べていく上で知って覚悟はしてたんだけど、急登だ。
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地図で見ると山頂までの道の線が短いから山頂まで近そうに見えるが、コースタイムがそこそこあるので傾斜が急ということだろうと思っていたが、まさにそのとおりだった。
なかなかハードだった。けっこうしんどい。
しばらく歩いてから5秒立ち止まって息を整える。そしてまたしばらく登って行った。”快晴だから登り切ったら最高の景色が観れる”と、自分をハゲましながら。
絶対寒いだろうと思って厚着をしてきたんだけど、急登ゆえに運動熱で暑くてたまらん。上着を脱いでシャツのジッパーを下ろしてもまだ暑いので、被っていたニット帽を脱いで手に持って歩いた。寂しい頭をまる出しにしながら。

前を歩いていたおっちゃんが、後ろを離れて歩くオレに気が付いて『どうぞ』と道を譲ってくれた。
ってか、ずいぶん離れてたのにわざわざ待っててまで譲ってくれた。

わかった!後ろを歩くニット帽を剥いだオレの頭と姿を見て、
(あ!毛無山の精霊だ!道をお譲りしなければ!)
と思ったに違いない。

失礼な!あとで崖から突き落としてやる!(おいおい)










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by moriyart | 2017-12-02 10:43 | 毛無山