どこかに行きたい

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その3(白峰三山)

出発。
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稜線歩きなので見える景色は当たり前だが見事だ。


む!何だコレは。
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これって静岡県の上のとがった所のの大部分はこの会社の所有っつうことになるんかい。なあ?組長さんよ。恐るべし大企業だ。間ノ岳以南の南アルプスほぼ主要な山ばっかじゃん。


ジリジリと射す陽の中、トボトボと歩いていく。
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今日、里まで下山する人は、もうここにはいない時間帯なのだろう。急にひと気が無くなってきた。あれほどいた韓国人の姿も見当たらない。ぽつぽつと人が現れてはすれ違う。

あの木柱はもしや…
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13時23分、白峰三山のひとつ、『農鳥岳』山頂へ到着。3026m
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人がいない。ってか疲れた。なんか感動よりも『やっとか…』感が強い。雲が出てきて見えているはずの北岳を隠す。
ボーっとしていたら、おねえちゃんが来たので撮ってもらった。
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なんかちょっと水分抜けて枯れて細くなってる気がする。たぶんやつれてカラカラになってるから年齢不詳っぽい風貌だ。今、遭難でもしようものなら、警察の現場検証で『えー滑落したのは60代男性の模様』なんて言われそう。そうなったら悲しすぎる。

おねぇちゃんにお礼を言った後、写真を数枚撮ってからすぐ出発した。
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気分はゲンナリ。
ナゼならこの後、山荘までの間にもうひとつ山がある。山があるということは、一度下った後、もう一度登り返しがあるっつう事だ。
農鳥岳を下っていくんだけど、思った以上に下っていく。次の山は農鳥岳より標高が高いからガッツリ登り返さなければならない。
程なく登り返しになってあっという間に失速。失速の40代。(なんだそれ) ちょっと歩いて休憩。岩に手をかけて上目使いで山頂を仰ぐ。 休憩をしてもさほど回復してくれない。3000m近辺で空気が薄いからなのか息苦しい。ゼーゼー肩で息をした。


ちょっと離れたピークに山頂標識が見えた。
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もうちょっとだ!がんばる!

稜線から今日の寝床、『農鳥山荘』が見えた。
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遠っ!ってか、ここからガッッッツリ下らないと…。


14時17分、三山付属の山『西農鳥岳』に到着。3051m
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後から来た兄ちゃんに撮ってもらった。
農鳥岳よりこっちの方が標高が高いから、こっちが主峰なのかな?ちょっとわかんない。
苦しい…気が遠くなりそう。もうフラフラだ。
時計を見ると、自分が設定したコースタイムよりちょっと遅い到着になっている。

休憩もそこそこ出発した。
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それでもあとは下るだけ。上から見た感じ登り返しも無さそうから気合で降りよう。
重力に逆らわない惰性みたいな歩きで、ややフラフラの足取りで下る。もうね、足の置き方が雑。浮石でも踏めば簡単にひっくり返りそう。丁寧に歩くという意識は もうまるっきり無かった。

そして15時前、『農鳥小屋』に到着。
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やっっっと着いた。疲れた…心が折れそうだった。これで今日は歩かなくていいんだ、ホントよかった。
座り込むと動けなくなりそうなので今のうちにテントを幕営してしまおう。受付に向かった。


【実は、ここ農鳥小屋に来るのを オレはとても楽しみにしていた】


ここの山荘のご主人がこの世界では有名なかたなのだ。
まあハッキリ言えばちょっと変わっている人らしい。
ちょっとでも遅くに到着すると怒鳴られたり、質問をしたら『お前なんかに教えてやらん』と言われたりで、ネットではとにかく色々書かれている。
それを知らずにここへ訪れてこの待遇を受けた為に『二度と来るか!』とか『とんでもねぇオヤジだ!』ネットにお怒りの評価を書いてしまう人もいるとか。

自分は前の前の職場から、変わった人とかかわる事が多かったため、そんな人と絡むのは慣れている節がある。むしろ”会ってみたい!”と強く願うようになっていた。そんなオレも変わり者なのか。


受付でテントの申請をしたときに応対してくれたのは女性だった。
あれ?いないのかな?なんて思いながらテン場利用の注意事を聞いていたら、建物の脇からヒョコっとおやっさんが姿を現した。

キターッ!!

心の中は大興奮。画像でしか見たこと無いおやっさんが目の前1メートルにいる。気分は憧れのスターに会った時か、初恋の人に再会した時のトキメキに似ている。(いやどっちも無いですが…)
『泊まり?』の言葉にオレと受付の女性が同時に『テン泊です』と口をそろえた。それを聞いたら、テンション低めに『あ、そう…』と言った後 奥に入ってしまった。


ありゃ?どんな意地悪な事を言われるか楽しみだったんだけどなぁ…と、何を期待してたんだか。ま、遅れて到着したわけでもないし、しょっちゅう意地悪言うわけじゃないしね。ちょっとおやっさんに期待しすぎたかな。

売店で『農鳥岳の山バッジ』を買った。
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テン場に戻り、久しぶりのテントを幕営した。
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正面に見える町は甲府市だかしん。ちょっとわかんないけど、夜になると夜景がキレイな予感がする。
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テントを張り終え、がんばった自分にご褒美をあげたいので売店でビールを買った。ビールを持って小屋前の広場まで来た。
広場に荷物用パレットが3つ置いてある。そこに腰掛け、ビールをプシュッと空け、グビッと流し込む。『ふーっ』と、大きなため息をついた後、そのまま後ろに倒れて大の字になり、真っ青な空をまっすぐ見る。
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ふと気がつくと後ろの寝かせてあるドラム缶の上におやっさんが座っている。双眼鏡を覗きながら間ノ岳を見上げている。

そうだそうだ、双眼鏡で間ノ岳からここへ降りてくる人を監視して、小屋前を通過する人に『お前はノロマ』とか『そんなに遅けりゃ下山できねぇよ』など辛辣な言葉を投げかけるんだった。行動がネットで見たとおりだ。

ただ、今日はもう間ノ岳から降りてくる人はもう無いみたいだ。オレも目を凝らして下山してくる人を探してみるが、やはりいない。

降りてくる人がいないとわかると おやっさんは小屋の中に入っていった。そして他の従業員に何か言っている。きっと今日の宿泊者の人数が確定した事を伝えてるんだろう。

これがさっきまでおやっさんが座っていたドラム缶。
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今日は『農鳥オヤジ(通称)』さんの暴れっぷりが見れないのかぁ。ちょっと残念。…って、何を期待してんだか。


この壁の『ウケツケ』の文字もネットでは『ウケケケ』に見えると書いてあったけど、残念ながらウケツケにしか見えない。
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ビールの空き缶を持って小屋の角を曲がったら、おやっさんとバッタリ鉢合わせした。
二度目のチャンスキター!
あきらめていた恋人に偶然逢い、恋の炎が再び燃え上がるドラマティックな展開にときめきが加速する。
さあ!いったいどんな意地悪な言葉のシャワーをオレにぶっかけてくれるのかと期待しておやっさんに聞く。
『あ、空き缶はどこへ持って行けばいいですか?』

と、聞けば『いいよ、もらうよ』と優しい声で引き取ってくれた。

あり?普通にいいおやっさんなんだけど…。今日は暴言の調子が悪い日なのかな(どんなだよ)…と思いながらポリポリと頭を掻いた。


この農鳥小屋の屋外のトイレもネットでは有名だ。
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だって完全な垂れなが……いや、なんでもないなんでもない。便器の穴から下の景色なんて見えなーーーーーい!



どんな意地悪な事を言われるのかとても楽しみにしてたので、ちょっとした肩透かし感でガッカリしながらテントの中で横になっていた。もうね、気分はハートブレイク。そのうちいつの間にかウツラウツラしていた。


ハッと我に返った。
いかんいかん、夕飯を食べないと。今のうちに済ませないと暗くなってしまう。よっこらしょと起き上がって支度をした。でも『横になっていたい』と『お腹が空いた』で天秤をかけたら今は『横になっていたい』、だ。
湯を沸かし、アルファ米のカレーピラフに注ぎ、15分待つ間に持参してきたパウチのワインをラッパ飲みした。(またかよ)
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時計を見て、あと5分くらいでできそうというところで、ふと前を見ると眼下の雲に丸い虹の輪ができているのに気がついた。
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うおー!もしや『ブロッケン現象』なのかー!

立ち上がり、虹の輪の中に自分の影を落とそうと坂を駆け下りた。あり?影ができない。場所が悪いのか!よし上だ!
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坂を駆け上がり、稜線まで上り詰めて振り返って虹の輪を見る。自分の影が無い。
場所を変え、見る角度を変え、色々やってみてもどうしても輪の中に自分の影ができない。

残念、条件が揃わないのかな。雲が遠いのかもしれない。あきらめよう。

ブロッケン現象とは言い切れず、モドキみたいなもんだけど、不思議な自然現象を見れたっつうことで自分をなっとくさせた。いつか本物を見てやるぞ。


陽が傾き、少し寒くなったテントの横でピラフを食べた。なんかあんまりおいしくない。やっぱアルファ米って、おいしいごはんにはなれないのか。しゃーないっちゃしゃーないけど製法の進歩に期待します。
その後、夕暮れの余韻もひたらず、歯磨きをしてとっととテントに入った。

オレの体のバッテリーの残が7%くらいしかない。寝袋という名の充電台に収まったとたん、あっという間に寝に落ちた。明日はどれくらい回復してるかな。フル充電は無理だろうなぁ。ま、いいか。

おやすみなさい。


夜中に目が覚め、(トイレに行きたい)と思うも、あまりの疲労のために動きたくない。ウンウンうなりながらぐるぐる寝返りをして尿意をごまかし、再び爆睡状態になった。おしっこより寝たいのだ。それほど疲れていたらしい。

歳はとりたくないものだ。










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by moriyart | 2018-08-25 07:17 | 白峰三山