どこかに行きたい

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カテゴリ:鷲羽・水晶・黒部五郎( 7 )

その7(鷲羽・水晶・黒部五郎)

記 録

活動時間:33時間59分
活動距離:56.51km
高低差:1,913m
累積標高上り/下り
5,686m / 5,703m
カロリー:13018kcal

4日間で太陽の光を浴びた時間:
ゼロ秒
浴びた風雨の量:
計り知れない
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感 想

えーっと…今回の目的は百名山ピークハント?ただのバッジ収集?

ここまで天気予報に裏切られた山行は未だかつて無いと思い返す。景色を見るのが一番の目的だったのに。しかもこの3つの山の山容はどれもすばらしいので、山の姿をながめるのも、山頂からの景色も楽しみにしていたのです…。
実際山で会った方々は週間天気の雲りベースの天気予報を信じて来られてるかたばかりで、まさか暴風雨の天候だとは思わなかっただろう。この天気がわかっていたら絶対来ていないはずだ。もちろんオレも。

長い登山人生の中でこういう事っていつか必ずあるとは思っていたが、まさかの水晶鷲羽でなってしまうとは…。北アルプス最深部、なかなか簡単には来れない場所で、だ。

でも悪い事ばかりではない。仕方なく小屋泊まりにしたおかげで敬遠していた小屋泊を体験することができた。テン泊より敷居が高いと決めつけていたので、おそらく一生泊まる事はないだろうと思っていた。

まあ、曜日的にも天候的にも小屋内は空いている時だったので快適でいい思い出ができたと思う。繁忙期のひとつの布団に二人という時だったら どんな思い出ができたのだろうか。今回オレは寝汗がすごかったので、もし誰かと二人で寝ていたら隣の人がおいしそうに蒸し上がっていただろう。




黒部五郎岳の山頂で兄さんと別れる前に二人並んで写真を撮った後、『まだ名乗ってませんでしたね』と、そこで互いに初めて自己紹介をした。
『ちょっと変わった苗字でして…』から始まり、教えていただいた職業は『地方テレビ局のアナウンサー』だった。しかも夕方のニュースのMCを務めているかたなのでその地方へいけば超有名人であろう。

聞いた瞬間、『なるほど…』といろいろと合点が行くところがあった。話し上手、説明上手、気象予報士の資格を持っている、100kmマラソン(なんかオレの中でアナウンサーってマラソンするってイメージがある)など。
山頂で聞いて、明日の下山まで確実に覚えてっこないのでスマホにお名前と放送局を軽くメモをした。

『局のブログをやってまして、写真を載せてもよろしいでしょうか?』に断る理由も無かったので承諾したが、オレなんか載せてページを汚してしまわないか心配だった。
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これはオレのスマホに残っていた写真。その地方では毎日、夕方のお茶の間ではおなじみな有名人でメディアに出まくってる人なので、彼のボカシは若干薄め。これを撮っている時はまだ互いに正体を明かしてはいない。

山っていろんな人がいるんだなぁ…と つくづく思った。

※9月8日追記
そういや『局のブログに載せてもいいですか?』の言葉を思い出し、放送局とお名前からアナウンサーの紹介ページにたどり着き、見つけることができた。
オレが撮った写真の逆バージョンでアップされてました。そのページのオレはボカシ一切無しのアホ面まる出しなのでなんだかありがたいやら照れくさいやらで申し訳なかった。
『どこかで再び逢えるような気がする』
あちらは有名人なのでオレからすれば、あっさりと再び画面でお会いすることができましたよ。ニュースの動画もあったのでちょっと拝見したら、本当にこのかたがキャスターをやっていて感動した。
今度は本当にいつかどこかのお山でお会いしましょう!


今回、雨風が強い鷲羽岳や水晶岳をあきらめる人を目の前で何人も見てきた。けっこう歳の多いかたでも『また来年来るからいいや』とか『いつか今度は違うコースから来るよ』とか言っている。70歳代も見えていそうな方々がそう言っている。
”もしかしたら歳でもうこれないから”とか”わざわざ遠い所をせっかく来たんだから”とかネガティブな事を言っている人は居なかった。この気の長さ、大らかさが山男山女なんだろうなと感心した。 せっかく来てもったいないからと言って登ってしまったオレは、しばらく山男にはなれそうにも無いかな。もうちょっと精神の修行が必要らしい。

まったく景色は眺めることはできなかったけど、そこまで残念な気分にならなかったのは良い思い出が多かったんだと自分を納得させた。


よーし、ここには10年後、オール小屋泊で再び訪れよう!あえて繁忙期に泊まって誰かと二人で一つの布団に一緒に寝てニオイ&蒸しテロだ!
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鷲羽岳・水晶岳・黒部五郎岳
おしまい




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by moriyart | 2017-09-02 10:00 | 鷲羽・水晶・黒部五郎

その6(鷲羽・水晶・黒部五郎)

え~♡
それならしょうがないな~♡


とりあえずは、”どの程度強風なのか”とか”どうしても小屋泊推奨なのか”と聞いてみるが昨日、小屋泊の快適さを知ってしまったので気持ちはもう小屋泊に傾いてしまったいた。
あっさりと小屋泊に変更した。

…が!

すでに予算オーバー!
財布の中に持ってきたお金が足りない。6500円×2日分は持って無かった。
しかし、ずーっと昔、テン泊を始めた頃、こんな事もあろうかと天蓋のあまり開けない場所にジップロックに入れた万札の存在を覚えていた。何か行動不能な事が起きて、仕方なく小屋に泊まる事になった時に支払えるように3日分の素泊まりの金額を入れてあったのであった。
使うことは無いだろうなぁって思っていたが、まさかここにきて使うことになろうとは。なーるほど…テン場がガラガラなのはそういう意味だったのか。
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代金を払って部屋に入った。ここは二段ベッドだった。そして空いているが、乾燥室にはザックや登山靴を入れてもOKではなかった。

ひととおり準備片付けが終わってから売店でビールを買った。飲食はどこでできるのか受付で聞いた時に談話室か自炊場でならOKとのことなので自炊場に向かった。自炊場のテーブルで一人の女性がミックスナッツを食べながら地図を見ていて今後の山行の計画でも立てている様だった。
『ここ、よろしいですか?』
同じテーブルに座りたかったので女性に声をかけたら『どうぞ』と快い返事。ビールを飲み持ってきた柿の種を食べた。
まもなくその女性はいそいそと地図を畳んで出て行ったので、一人静かな自炊場で柿の種のポリポリという音を響かせていた。
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早い晩酌も終わり、山荘の窓から外を見ると遠くに青空が見えている。
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これは未だかつて見てない空なので大急ぎでカメラを持って山荘のサンダルを履いて外に出た。
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ここ双六小屋の頭上は晴れて無いが、遠い山の上は晴れている。鷲羽、水晶、黒部五郎の山頂でこんな景色を見たかったなぁと嘆いた。
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山荘に戻ると夕食の時間。
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山荘の従業員のかたが声を上げてお客さんを食堂に誘導していた。
自分は今日も自炊なので自炊場に向かった。いくつかあるテーブルは自炊する人が座っていたので、空いている席の隣に座っている若者に『隣いいっすか?』と聞いてから座った。
今日の晩御飯は”エビピラフと親子丼のもと”。どっちも湯で戻すヤツだ。

湯を沸かしてアルファ化されたエビピラフに注ぐ。できあがりまで15分かかるので受付まで行って”トリスハイボール”を買ってきた。
ハイボールを飲みながら出来上がりを待つ。それでも暇なので真隣りで調理している若い兄ちゃんの夕飯をながめていた。生米から炊き込みご飯を作っていた。凝った夕飯で本当においしそうでうらやましかった。

兄ちゃんは黙ったまま調理しているので、話しかけられたくないのかなぁ…なんて遠慮していたが、トリスハイボールの酔いが回ってきてついつい話しかけてしまった。
静かな話し方をする人だったが、話し好きでいろんな話をした。なーんだ、もっと早く話しかけてればよかったよ。

25歳で保育士だそうだ。今どきの保育園事情をいろいろ聞いた。なかなか話が面白くて、今どきの子供と保護者のモンスターっぷりで話が盛り上がった。少しだけ職業に共通するとこがあるからさ。
男の保育士が保育園でうまくやる条件はやっぱり”印象、見た目”だ、そうだ。 たいへんだなぁと思った。



部屋に戻る。
どうやらここの部屋にいる人は全員、テン泊から小屋泊に変更した人がいるみたいだ。なるほど、だから炊事場が近いのか。 テン泊あきらめ組部屋ってとこね。
そして半強制的に小屋泊になったので オレと同じ”小屋泊自体が初めて”という人がけっこういた。そして初めて経験した小屋内の設備の良さや居心地の良さに驚いて『やべぇ、小屋泊クセになりそう…』と苦笑いを浮かべている。

同感です!



消灯時間になり、布団に潜って寝た。
真夜中、受付のおねぇちゃんが言ったとおり、凄まじい暴風が吹き荒れた。風の塊が建物に衝突するかの様。山荘がドカーンと振動する。こんな風の中、テントにいたら確実に一睡もできないだろう。受付のおねぇちゃん、ホントにありがとう。 最初はテン泊1000円から小屋泊6500円に変更者続出で『儲かりますねぇ』なんてひでぇ事思ったけど、今となっては感謝感謝ですわ。命の恩人と言っても過言じゃないよね。

『あー小屋泊に変更してよかった♡』

そう思いながら枕にスリスリして眠りについた。


4日目

朝、4時台に電気が点いた。
窓から見える景色はやっぱり雨だった。結局最後まで天候は回復しなかった。
同部屋の人達は、ワリと今から山に向かう人が多かったのでガッカリムードがすごい。自分はもう下山するのでそこまで消沈していない。
『今日はもうここに滞在するからギリギリまで寝てます』
と言いながら布団に潜る人たちを横目に着替えながらパッキングもした。


そして6時前に双六山荘をあとにした。
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山荘の裏のテン場にはひと張りだけテントが幕営されていた。
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すげぇ!昨晩の風爆弾に耐えたのか。ってか、絶対眠れなかったと思う。あの風はポールさえ破壊しそうだったからさ。

新穂高に向かう帰路も雨。
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よく雨だと『雷鳥がよく出る』というウワサは本当で、今回の雨続きの山行の中で雷鳥とは やたらと遭遇した。
ただ、今頃遭遇する雷鳥達は、ほぼ成鳥で、人間の姿を見ると逃げてしまう。ヒナを連れている時の やたら近寄ってくる素振りを見せない。これもウワサだが、人間の近くにいれば、ヒナを狙う獣から守ってくれると思ってるため、ヒナ連れの親鳥は人の近くに来る…というのは本当なのかもしれない。

舗装された林道に出た。
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もう一息だ。
歩いていると今から山へ向かう人達とすれ違う。おしゃべりに夢中で楽しそうなおばさんもいるっちゃいるんだけど、ほとんどの人の表情が楽しそうじゃない。無言で口がへの字になっている。
そうだなぁ…天気が悪い中 山へ向かうのは不安だろう。やっぱり往路から晴れてると気分もテンションもアゲアゲになるんだけどね。天気予報だと明後日くらいから回復するらしい。(もうアテになんない)

わさび平小屋まで帰ってきた。
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しとしと雨の中、外のベンチにザックを下ろし、ベンチに腰かけて最後の休憩をした。
涼しいし、喉も乾いていないけど、疲労がMAXだ。山荘にある露天で売っているジュースに気が付いた。
山水に冷やされているジュースやビールを見ていたら、なんだか飲みたくなってきて、普段あまり買わない瓶のラムネを買った。
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昔と変わらぬ開栓方法だった。屋外だし、雨の中だしで、豪快に頭の栓を叩いてビー玉を落とす。意外にも泡が噴き出なかった。
グビっと大量に一口。

っっかぁ~!体に染みわたる~!

友達の『かーしゅな』が若い頃からビールを飲んだ時に放つ名台詞である。
『からだ?おなかとか内臓に じゃねーの?』なんてからかったりしたんだけど、今、彼の言っていることを身をもって理解できた気がする。

おそらく成分のブドウ糖が疲れた筋肉や脳に超吸収されていったんだと思う。立ち上がってザックを背負うとホントに体が軽かった。まあプラシーボ効果だとは思うけど、頭スッキリ、体力500回復した。
そう考えると無理してガンガン進むより、少しずつでも休憩していった方が最終的に早く着くのかもしれないと思った。


新穂高が見えてきた。
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馴染みの『新穂高ロープウェイ』だ。
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こんな天気なんだけど、営業しているのだろうか。

そしてついに4日間の山行を終えて10時半、『新穂高登山指導センター』に帰ってきた。
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おとーちゃん雨の中頑張ったよ。

そこから歩いて10分の駐車場へ到着。
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愛車が変わらぬ姿で待っていてくれた。思わず『ただいま』と言ってしまった。
雨の中、後ろのハッチを開けて、汗なのか雨なのかで濡れた服や靴を脱いでいく。
濡れ物だらけでせまい軽の車内のいたる所にカッパやらズボンやらが積み上げられていった。

指導センターの裏にある温泉に寄って汗と汚れを落とした。
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なんせ3日風呂に入って無いからね。よく身体が痒くならなかったと感心した。最近のオレの額はこんこんと脂が湧き出るし。まるで油田。オレの脂の埋蔵推定量は700億バーレルで、サウジアラビアの量を超える。だからこのまま帰ったら 脂テロ&においテロになってしまいますわ。
洗い場で一通り洗ってお湯で流した後、もう一度最初から全身を洗い直す。雨が降って風情のある露天で川の流れを見ながら数日ぶりのお風呂を楽しんだ。


帰路、長野県の中では陽の光を浴びることは無かった。
途中、昼飯として諏訪の定食屋で野菜炒めじみたものを食べた。久しぶりの生鮮物でシャキシャキとした野菜の歯ごたえに涙が出そうなほど感動した。日々防災食みたいのばっかり食ってたからさ。

地元に帰ってきて夕日でもお日様の光を四日ぶりに浴びた時にはしばらく眺めてしまった。やっぱ太陽っていいなぁ。
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…長野から地元まで尿意が無かったのでほとんど車から降りずに帰ってきたのだが、地元に着いて車から降りた時の気温が35度だった。
山との気温差がすごすぎてクラクラした。







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by moriyart | 2017-09-02 08:37 | 鷲羽・水晶・黒部五郎

その5(鷲羽・水晶・黒部五郎)

三日目

朝、4時半に『朝食の支度ができました』でみんな食堂に集まっていく。同部屋のかたが、やはり気を使ってくれて誘ってくれた。しかし素泊まりの自分は自炊場で独りロールパンとたまごスープでやり過ごす。
歯を磨いて、ちゃちゃっと支度をして部屋の誰よりも早く『黒部五郎岳』へ向けて出発した。荷物は山小屋で預かってくれたので、片手にポカリの500mlだけ持っていった。
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小屋の外へ出てみるが、やっぱり雨&ガス。一日くらいは晴れじゃないにしても山容が見えるくらいガスが切れる日があるかもと期待したが、今日もまるっきりダメでした。
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途中二人と、山岳部の集団を抜いた後は ずっと一人っきりだった。この山は巨石の点在する広大なカールをながめることができる有名な山だけど、ガスガスゆえに展望はまるっきりでした。

稜線に出た。
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なんか動くものがいると思ったら雷鳥だった。
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天気が悪いと良く出るというが、確かによく見る。ずっと天気悪いから出没しすぎ。だから見慣れて驚きもしないや。

山岳部の集団を抜いてからは、もう小一時間誰にも逢わなかった。もうすぐで山頂っぽいけど、雨の中、山頂標識と写真を撮る時に、セルフタイマーの12秒のうちにレンズに雨がかかって撮れないかもしれないと半ばあきらめていた。
小休止している時に何気に後ろを見るとガスの中からボヤっとオレンジ色のカッパの人影が見えた。

昨日からよく逢う兄さんだった。すげぇな、荷物を背負ってる人が荷物無しのオレに追いつけるなんて。

でもありがたい、雨で無理と思っていた標識と一緒の写真が撮れる。山頂で互いに写真を撮りあった。
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ここで兄さんとはお別れ。長野県側へ帰るオレと、富山県へ帰る兄さん。この先は偶然逢うというミラクルはもうない。互いに行き先を告げてないのに行く先々で再び巡り合ってなおかつ同部屋にもなるくらいだったので、ここまで偶然が重なる境遇になんかちょっと名残惜しかった。
兄さんもそう思ってくれたのか、『二人で一緒に写真を撮らせてください』と言ってくれて自撮りスタイルで二人並んで撮った。 そんなら便乗してオレもお願いしていいですか?と自分のカメラでも撮った。

最後に握手をして別れた時にお互いの口から出たのは、『なんかいつかどこかの山で偶然逢えるような気がする』だった。

たしかに本当にそんな気がした。


黒部五郎の山頂からの復路は稜線コースで帰った。
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やっぱりここでも多くの雷鳥と遭遇した。
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見た目は丸っこくてかわいいんだけど鳴き声がかわいくないんだよね。


9時半に黒部五郎小屋に帰ってきた。
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小屋内のテーブルで少し休憩させてもらった。若者が同じテーブルで、小屋で売っていた林檎を丸かじりしながら食べているのを見て、つい『歯ぐき健康だね。オレだと林檎が血だらけになるよ』と声をかけてしまったが、若者も『案外いけちゃう自分の歯ぐきに驚いています』と返してくれた。
そこで黒部五郎岳の山バッジを買った。
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小屋番のかたにお礼を言って小屋を出た。
これで一応山行は終わりだが、今日一気に帰るのは無理があるので途中の『双六小屋』のテン場で寝るつもりだ。

途中、天気が回復することは無かった。天気が悪いのでやっぱりあちこちで雷鳥を目撃したが、やっぱり『ふーん』だった。

往路でやめた双六岳経由は復路でもやめた。どうせガスガスで見えないしね。

そして4時間近くかけて『双六小屋』に到着した。
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受付に行く前に小屋裏のテン場にわざわざ見に行って混雑具合を確認した。
だだっ広いテン場にひと張りのみ幕営されていた。もんのすごく空いている。

テントを撤収してから濡れたままゴミ袋に無造作に突っ込んであるだけなので幕営したい。袋に入れたまま放っておけばカビてしまいそうだからだ。
今晩ももしかしたら天気が悪くて夜中に土砂降りになりそうだけど、やっぱりテントの状態が気になるのでテン泊にしようと双六小屋の受付にテン泊の申請をした。
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受付の若いお姉ちゃんから返ってきた言葉は、
『今晩、非常に強い風が予想されるため、テントご利用のお客様に素泊まりを提案しております』との事。
元々わりと強風が吹き抜けるテン場だが、最近の天候だとさらに強い風が吹き抜けるために安全のために小屋泊をお願いしているらしい。





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by moriyart | 2017-09-02 08:26 | 鷲羽・水晶・黒部五郎

その4(鷲羽・水晶・黒部五郎)

11時40分に三俣山荘に帰ってきた。
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ここ周辺は風が穏やかだ。ちょっと疲れて休みたかったので受付に声をかけて休憩室で休ませてもらおう。水晶岳で逢った兄さんもここでオレに追いついた。かなり時間差があったはずだが、さすがマラソンやってる人は速い。
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休憩室内には この悪天候のせいで足止めを食らってる人達が大勢いて話を聞いてみると本当は水晶岳に向かいたいんだそうだ。
しかし見た感じ御年65以上の方々ばかりなのでとてもじゃないが『行けますよ』なんて言えない。気の利いたセリフなんか言えず、『残念な天気ですねぇ』くらいしか言葉が出てこない。

兄さんはここで昼飯を食べていくそうなので、礼と挨拶『またどこかでよろしくお願いします』を言って山荘を出て、幕営したままのオレのテントに向かった。どうか飛ばされてませんように…。

テン場に戻るとすでに大概のテントは撤収されていて、オレの隣のテントもいなくなっていた。自分のテントは朝と変わらぬ姿で待っていてくれたので一安心。
小雨の中、雨の跳ね上がりで裾が砂だらけテントを撤収した。
テントもビシャビシャ、テントの中もビシャビシャ、テントに残しておいた装備もジメっと濡れている。おまけに背負っていたザックに被せていたカバーが、強風で半分剥がれてしまっていたのを気づかずに歩いていたので、ザックの中も濡れている。
なのでほぼ全ての装備が濡れてしまっている。あーあ…。

テンションだだ下がりの中、パッキングを済ませ、濡れて少し重量の増したザックを背負って次なる目的地に歩き始めた。
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途中、大きな雪渓を渡る。
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アイゼン無しでも滑らないが、最近の雨で色付けされたルートが消えかかっているのと、周囲がガスガスで遠くが見えないのとで 雪渓上で迷いそうになった。
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おかしいなぁ…いつも息子くんの作ってくれる『てるてる坊主』の晴れパワーが強烈で雨予報でもひっくり返すこともあるけど今回はダメなのか?そういやウエストバッグに入っていたのを思い出し、出してみる。
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ビショビショに濡れてぺったんこになっていた…。すまねぇ…てるてる坊主よ。
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雨は小降りだが止むことは無かった。
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時折ガスが切れて視界が広がることはあっても、遠くの山が望めるなんてのは夢また夢だった。
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2時間半以上かけて、15時に『黒部五郎小屋』に到着。
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もうね、カッパの中も装備も気分もずぶ濡れ。イヤんなっちゃった。こんな天気じゃテント幕営して装備を広げても絶対に乾かないだろう。また昨日の夜みたいに夜中に土砂降りとか降りそうな予感がしまくっている。
あー乾いた場所に座りたい!カラッとした床に寝っ転がりたい!

小屋の受付でついに『素泊まりで…』と言ってしまった。
『6500円です』の言葉に財布をあさる。びしょ濡れの千円札を謝りながら渡した。財布の中までびしょ濡れだった。
オーナーは笑いながら『ではお札を吊るして干しておきます』と受け取ってくれた。
その時に山小屋に泊まる事自体が初めてであるのを伝え、あとで恥をかかないように質問しまくった。

山小屋に上がり、廊下を歩いて行くと、濡れた靴下が足型のスタンプを押していく。今日は空いているので、靴や雨具やザックを乾燥室に入れてもいいらしい。やったー!これで装備がカラカラに回復するぞー!それだけでも小屋泊にして良かったというもんだ。
服をリラックス着に着替えて、今日着ていた服を乾燥室のハンガーに吊るした。

指定された2階の部屋『ライチョウ』に入った。60代くらいのかたが一人居たので『よろしくお願いします』と声をかけた。
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布団が10組用意されていた。でも壁に書かれている数字を見ると24まである。ということは繁忙期には一つの布団を二人で寝ることになるのか…。ホント今日は空いていてよかったよ。暴風雨のおかげなのか。

その60代のおっちゃんがいろいろと話しかけてくれたので気まずくならずにリラックスできた。そういやおっちゃん以外にもう一人分、棚の上に荷物が置いてあるから他にもこの部屋に泊まるかたがいるんだろう。
おっちゃんと話している時に入ってきた人は水晶小屋で逢った兄さんだった。偶然の再開に『ああ!』と声が出てしまった。

兄さんはオレの顔を見て1秒くらいハテナ顔をした後に、オレだと気が付いてくれた。そうだよなあ、今までずっと帽子かカッパのフードを被っていたから、まさかその下はこんな頭だったなんて知らなかっただろう。

今回は長期山行になるので、髪の毛をいつもより短く刈ってあった。その頭を嫁さんが見て言った一言、『海老蔵みたい。ホラ、眼鏡を額に乗せてる姿も似てるよ』と。
オレは海老蔵みたいにお目々パッチリでも二重でもないので海老蔵に失礼だ。額に乗せてる眼鏡もサングラスではなく老眼鏡だし。だから『カニ蔵』としよう。(カニに失礼)


その後もう一人60代のおっちゃんも加わり、10人部屋(最大24人)に4人という贅沢な部屋割りになった。

自分は新参者で小屋泊も経験が無いので、先輩方にいろんな質問をした。同じ趣味を持つ身として有用な情報をたくさん得ることができた。
兄さんは山登りよりマラソンの人らしい。100kmマラソンも完走したのだそうだ。…なるほど、なら体力も無尽蔵じゃん。あの登りの超ハイペースもナットクできた。
そして若く見える同い年くらいだと思っていたら、50代だそうでさらに驚いた。ゆえに老けて見える自分の年齢をとても言いにくかった。
山行中の靴擦れを相談したら、マラソンをやる人がよく使っている皮膚保護剤を紹介してもらった。なかなかすごい効果なので『成分はなんですか』と質問したら、パッケージに記載してある成分を読もうとするもこの部屋にいる人は全員 鳥目の老眼なので誰一人 極小文字で書かれた成分を読めなくてみんなで笑った。


『夕飯の支度ができました』の声でみなさんが食堂へ集まっていく。同部屋の人達がオレを気にかけてくれて『行きますか?』と声をかけてくれるが、オレは素泊まり。
自炊場でラーメンを作って食べた。自炊する人はオレ以外いなかったが、自炊場周辺が工事中で自炊場は一人が限界だったのでちょうどよかった。
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食事後も消灯まで4人で談話した。隣に寝る兄さんに『鼾がうるさかったら蹴っ飛ばしてくれて ええっスよ』と言ったら笑っていた。





真夜中、ザンザン降りの土砂降りになった。二階で天井イコール屋根という造りなので叩きつける雨音がダイレクトだ。
その音を聞いて、(嗚呼、小屋泊まりにして良かったぁ♡)と、幸せな気分になって枕にスリスリしたあと布団に潜った。

山小屋さまさまやぁ~♪







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by moriyart | 2017-09-02 07:48 | 鷲羽・水晶・黒部五郎

その3(鷲羽・水晶・黒部五郎)

二日目

明け方まで降った土砂降り程では無いけど、今もしとしと雨が降っている。少し風もあるようだ。
あれー?曇りベースで晴れマークがちょこちょこ付いてたと思ったんだけどなぁ。まあ山の天気は変わるんだろうからしょうがないけどさ。

それでもこのままテントに居続けるのはイヤなので鷲羽岳と水晶岳へ向かう準備をした。
どうせここからピストンなのでテントは張りっぱなしで。荷物無しの身軽で行く事も考えたが、悪天候だし、何かあった時のファーストエイドも持っていきたいし、簡単な食糧も持っていきたい。
そう考えて必要なモノだけをザックに詰めた。60リットルもあるので少ない荷物だとグタっとだらしないフォルムになってしまう。無駄になっている空間はベルトでテンションをかけてぺったんこにした。

カッパを着てザックを背負い、外に出た。
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山荘横を過ぎてしばらく歩くと上り坂。途端に強風が吹き荒れた。山の裾野から吹き上がってくる風に雨が乗ってるので下から雨が降る。雨風の強さはまるで台風。
なんかヤバいかも。いくらなんでも雨も風も強すぎる。時折吹く突風によろける時がある。 登山道も所々スッパリ切れ落ちている所があって、悪い事に崖に突き落とす方向に風が吹いている。
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しばらく登っていて疲れたので一休み。
休んでいる時にだんだん不安になってきた。こんなに風を浴び続けていて、今は運動熱で暑いからこの風に耐えられるんだけど、もっと標高があがったり歩けなくなった時に、この風で低体温症になるんじゃないか。真の恐怖は汗冷え後かもしれない。

そこでしばらく休憩がてらずっと立っていて、登ってきた運動熱が冷えてもさらにしばらく風を浴び続け、どれくらい耐えられるか試してみた。

風は強いけど、風自体は夏の風っぽいので凍えてしまうって事は無さそうだ。もちろんカッパ無しで浴びれば30分もたないだろうけどね。

よーし行けそう!(たぶん…)

視界にもう一人登っている人が見えるってのが良かったのかもしれない。その人の後を追っていく。
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午前7時、『鷲羽岳』山頂に到着。
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風つえぇえ!吹き飛びそう。雨つぇえええ!防水カメラで良かった。
そしておっちゃんがいてくれて良かった。この風じゃ、岩の上に置いてセルフで撮ろうとしても無理だわ。
おっちゃんと互いに撮りあった。
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おっちゃんと少し話した。おっちゃんは水晶岳も行く予定だったが、もう怖くて無理だから山荘に帰るんだそう。またいつか今度は逆方向からトライするよと言って下山していった。

山頂に一人残って考える。おっちゃんの判断は誰が見ても正しい。台風みたいな天候でこのまま進むオレの方が愚行だろう。
だからといって『冒険する』とまでは言えないんだよなぁ…現にさっきからずっとこの雨風を浴びてるけど寒いって思わないからさ。

よーし行ってみよう!

今、暑い静岡の平野で思い返してみても、やっぱりおっちゃんの判断は正しい。オレは無茶だった。おっちゃんはこの先 遭難とかしないでしょう。オレはきっといつか遭難しそうだ。でもなぁ…その時は絶対行ける自信はあったんだよ、ホントに。
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鷲羽岳を下ってもそこは ほぼ稜線なのでまるっきり風が止まない。横からの強風に耐えるため体を風側に傾けて歩いて行く。でももうこれだけ長い時間この天候の中を行動していればいい加減風に慣れてしまった。
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8時20分『水晶小屋』に到着。
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小屋前で一休み。さすが山小屋は風の弱まる場所に建ってるのか、久しぶりに緩い風になった。
『すごい天気ですね!』
後ろから声がしたと思ったら、爽やか笑顔の兄さんがいた。兄さんは水晶小屋の中で少し休ませてもらうと言っているのでオレも便乗してついて行った。

小屋に入ると、小屋番の若いおねぇちゃんがブルーシートを敷いたり、椅子に座ることを勧めてくれたりして労ってくれた。
兄さんは『雲ノ平』方面からここへ来たという。水晶岳に登るつもりだが、この天気じゃさすがにやめようかなと言っていた。

小屋番のおねぇちゃんが言うには今朝はこの小屋からは水晶岳へ登った人はいないそうだ。おねぇちゃん曰く、
『止めはしないけど、おすすめはできない』
とのこと。小屋番のかたがそう言うのなら行かない方が賢明だろうが、オレ的にはすでに暴風吹き荒れる鷲羽岳から下りてきた後なので、この風に慣れてしまって水晶岳に登る気マンマンだった。

それを聞いた兄さんは、『このかたが登るなら、私も登ります。二人なら心強いし』とのことで急遽即席パーティができあがった。

荷物を小屋に置かせてもらい、二人で外に出た。『よろしくお願いします』で小屋裏の登り口から山頂へ向かう。

とたんに風が強まったが、体感的には鷲羽の時より弱く感じたので(行ける!)と確信した。
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兄さんが前、その後を着いて行くのだが、兄さん速い。時々チラチラ後ろを見て気遣ってくれてるけどオレもギリギリ着いて行けるくらいだ。目線を下にやると兄さんが履いている靴は登山靴じゃない。
これってトレランシューズじゃん。
なるほど、じゃあ速いわ。すごいなぁ、さっき山登りは1年ぶりって言ってたけど、マラソンやる人って登山も強いのか。


9時『水晶岳』山頂に到着。

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ここも雨風強い。でも兄さんがいてくれて良かった。心強かったし、山頂標識と写真撮ってもらえたし。まあでも景色見れるわけじゃないし、ごはんも作れる天気じゃないのですぐ下山した。
水晶小屋に戻るまでに数人の登ってくる人とすれ違った。たぶん小屋番のおねぇちゃんが『今二人登っている(オレ達の事)』と言ったのを聞いて登る気になったのかもしれない。

山頂から30分で小屋に帰ってきた。
小屋番のおねぇちゃんがオレ達を見て『ああ、無事でよかった』と言ったのを聞いて、心配かけてたんだなぁと ちょっと申し訳ない気分になった。

また小屋でしばらく休ませてもらった。小屋には何人か休んでいる人がいた。
兄さんはジェットボイルで湯を沸かし、暖かい飲み物を作り始めたので、オレも湯で戻すパスタを食べようと用意した。
しかし、今までの雨風でザックの中まで濡れてしまい、その中にあったバーナーのイグナイタが濡れてしまった様だ。点火しようとカチカチやっても電気が飛ばない。
一瞬、誰かにお湯を作ってもらおうと声をかけようかと思ったけど、なんか言えなかったからパスタはあきらめて他に持ってきたバターロールを口にねじ込んだ。


休憩も採ったし、そろそろテントの幕営してある三俣山荘へ帰ろう。
その時、兄さんが鷲羽岳周辺の天気情報をオレに聞いてきた。雲ノ平から来たので鷲羽岳へは今から向かうことになる。

水晶岳の雨風よりも強い事、風に晒される時間もはるかに長い事、切り立った崖がある事、崖へ落とす向きで風が吹いている事。
それゆえに『止めはしないけど、あぶないからおすすめはできません』などと まんま小屋番のおねぇちゃんが言ったセリフを真似て二人に言った。人にアドバイスするようになるには経験少なすぎだよなぁ。勘違い野郎すぎて恥ずかしいわ。

それを聞いた兄さんと、一緒に聞いていたソロのおねえちゃんも鷲羽岳に登るのをあきらめた。

それが普通の人の判断だよなぁ。潔い。オレみたいに『とりあえず行ってみる』って言わないもん。この人達もぜったい遭難しなそうだ。やっぱオレが変なんだよ。


兄さんとおねえちゃんはまだ小屋に残っていたので一人小屋から出て、三俣山荘へ向かった。復路は道を変えて稜線コースから谷コースにした。稜線はあの暴風が吹いてるし、谷なら窪地なので風がほとんど無い。これなら安全に行けそう。
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久々に無風の地帯を歩いた。
さっきまでの暴風地帯が嘘の様。この谷から見上げる山頂がガスで覆われた鷲羽岳の稜線は今もさっきの暴風が吹いているんだろう。
強い風を正面から1時間浴びる単位を『壱T.M.Revolution』とするなら今日だけで『四T.M.Revolution』浴びたと思う。『拾T.M.Revolution』で西川貴教になれるので、あと六T.M.必要かな。


…なんのこっちゃ




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by moriyart | 2017-09-02 07:37 | 鷲羽・水晶・黒部五郎

その2(鷲羽・水晶・黒部五郎)

指導センターを出発。
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重く低い雲が山にかかって山頂が見えない。天気予報は曇りだが、奇跡の回復を願って歩いて行く。
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道のド真ん中にうごめく黒い影。
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これは、もしかして…
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ヒメオオクワガタのメスかもしれない。ネットでちょっと調べてみたけど、オスより判別が難しい。どれも同じに見えるからだ。やっぱクワガタはオスのアゴの形でわかりやすいんだよなー。
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標高も1000メートル超えてるし、たぶんヒメオオクワガタでしょう。
丹沢にいたオスと会わせてみたいな。

途中にあった橋の注意看板。
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『橋が落ちても知ったこっちゃねーよ』ってか。さすがに薄情すぎやしませんかねダンナ。

6時50分『わさび平小屋』に到着。
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軽く休憩をした。丸太をくり抜いてできた水槽にトマトやキュウリが浮かべてあった。
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冷たくておいしそうだ。
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途中の沢を渡るところで手を浸してみれば、やっぱり冷たい。この沢の水でさっきのキュウリやトマトを冷やせば そりゃおいしいだろうよ。
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雪渓の下の広くなっているガレ場で休憩をした。
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雪渓の冷気が沢の水と一緒に下ってくるので冷凍庫を開けた時みたいなひんやりした風が全身を通過するので数分で震えるほど寒くなってきた。
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さて行こうと立ち上がって何気に藪の方を見ると草むらの中に何か見える。
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『!』
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一瞬ギクリとした。
見てはいけないモノを見つけてしまったと焦ったが、よくみるとブルーシートだった。
たぶん登山道を修復している人の道具なんかを覆っているんだろう。あーびっくりした。

その後も進んでいけば、標高も上がり、いよいよ雲の中に突入してあたり一面はガスガスになった。
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鏡平の少し手前の『鏡池』に着いた。
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ここは水面に写る逆さになった槍ヶ岳の姿を楽しめる場所だ。
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ガッスガスでまるっきり見えない。ギリギリ対岸の樹木がうっすら逆さに写っている程度だ。これじゃ『霧の摩周湖』じゃん。
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一昨年、笠ヶ岳からの帰りにここへ寄った時に見た鏡池。槍ヶ岳と穂高連峰が見事に映っていて美しい。
本当は今回もこういう景色を見たかったのよー。


10時、『鏡平山荘』に到着。
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5時間近く歩いているので少し長めに休んだ。今到着したばかりの山岳部の若い男女が変わった掛け声の点呼をしていた。
『いっとにーとさんとよんとー…』みたいな。
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その後もガスガスの中を歩いて行く。
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たまーにガスが少し切れることもあったが、遠景を望めるほどには晴れない。

淡~い水色の青空がごくごくたまに覗く時があるがこれが精いっぱい。
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お昼頃、やっと『双六小屋』が見えてきた。
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小屋の裏のテン場はガラガラだ。
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さすが平日だなぁと感心したが、この時はなぜテン場がガラガラなのか理由を知る由も無かった。

12時過ぎ、双六小屋に到着。
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小屋前のベンチで買ってきたコンビニのにぎりを食べた。
もう6時間以上行動しているので、なんか疲れた。テン泊の荷物重たいし。せめて天気が良ければ気分ももうちょっと晴れるんだけどね。

天気悪いし、気分も乗らないので双六岳山頂に向かわずに巻道を歩いた。
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このころからガスがさらに厚くなり、ついにポツポツと雨が降り出した。
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カッパを着ようか悩んでいるとそのうち雨も止むのでそのまま歩いた。それが何回か繰り返される。

何回目かの雨の時には止まずにだんだんと雨脚が強くなっていった。
それでも(きっと止むだろう)と期待してカッパを着ずに進んで行った。途中、バテ気味の足取りの兄ちゃんを抜いていく。
けっきょく雨は止まずに本降りになってしまった。
(さっき着ておけばよかったなぁ…)なんて思っていれば、

ゴロゴロゴロゴロ…


ぎえええぇぇぇ!
ちょっと遠いけど正真正銘の雷じゃん。しかもここはほとんど稜線じゃん。遮るものが無い!

さすがにヤバい。駆け足で進んで行く。そのうち登山道の両側にクマザサが茂り、ガサガサと足や体に当たる。

まずいまずい、このままだと濡れた笹のせいでずぶ濡れになってしまう。いくら急いでいても芯まで濡れたんじゃ意味が無い。

岩場の広い場所で天蓋の中からカッパを取り出し、大急ぎで着る。(落ち着け、慌てるな…)繰り返し念じてカッパの下を前後ろに履かないように注意する。

ちょうどカッパを着終わった頃、さっき追い抜いたバテバテ兄ちゃんがオレに追いつき、『雷鳴りましたよね、バテてたけどビビッて急いできました』と言ってきた。
では、急いで山小屋まで行きましょうか、と声をかけて駆け出した。

しばらく走った後、振り返ると兄ちゃんがいない。やっぱりバテたのか。
しょうがないなぁ…と、しばらく待っていたが、もう一発の雷鳴。

はっ!そういや知らん人だったわ!アディオス!

薄情まる出しで彼を置き去りで逃げ出した。だって知り合いじゃないもーん。

遠くに山荘が見えた時には ものすごく安心した記憶がある。助かったー!って。
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雷も鳴ってるし、雨も降ってるので空いていたらもう山荘に素泊まりでもしてしまおうかな…なんて半ば冗談で山荘内をのぞいてみれば、けっこうな盛況。素直にテン泊にしました。

お金を払ってからテン場に戻った頃には雷はどこかに行ってしまった様だ。
テントを幕営して服を着替えて、濡れた服をテント内の紐に吊り下げた。でも周りが湿気てるから乾きそうもないけどね。

テントを出てもう一度山荘に向かい、山荘でビールと鷲羽岳と水晶岳の山バッジを買った。まだ登頂してないんだけど忘れる前に買っておいた。
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山荘内の休憩所に置いてあるストーブに背中を向けて温まりながらビールを飲んだ。
スマホを取り出して情報を得ようとするが、圏外。ドコモですら通話できないここはやっぱり北ア最深部なんだなと実感した。仕方ないのでテレビに映るBSの映像を見ていた。

さて、テントに戻ろうかと外に出ると土砂降り。テントまでけっこうな距離だったからずぶ濡れになってしまった。
テントに戻って濡れた上着を紐に吊るした。濡れ物が増えてしまった…アホだ。

その後の雨は止むことは無かった。
仕方が無いのでテント内で湯を沸かし、アルファ米の白米に湯で戻す野菜カレーをかけて食べた。本降りの雨の中、あんまりおいしくない今日の夕飯を食べたのでテンションは下がりっぱなしだった。

真夜中から明け方にかけて土砂降りの雨。テントにバシバシ当たる雨の音が激しすぎて寝れそうも無いが、連続音なのでいつしか慣れて寝てしまった。ときどき目が覚めて(トイレに行きたい)と思うが、ザンザン降りの土砂降りじゃとても外に出れないので、いろーんな事を考えた。バカな事、エロい事、アホな事。そんなことをして気を紛らわせていた。





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by moriyart | 2017-09-02 07:24 | 鷲羽・水晶・黒部五郎

鷲羽岳・水晶岳・黒部五郎岳

八月に入ってからは来たる夏休みのために仕事に勤しみ、できるだけやり残しが無いように頑張った。みんなが休むお盆中も仕事に出て、施設の保守をした。
まあ、人が少ない方がやりやすいんだけどね。

今年の夏の空は変だ。
スッキリした夏空にならない。晴れていてもどこかジメっとしていて青い空に白い雄大積雲がある様ないつもの空をあまり見ない。なんとなく春空の様に霞んでいる。
5日間ある夏休みを各週末に割り振り、週末を3連休または4連休にして機会をうかがっていた。もちろんその中には家族に奉仕するための家族旅行日程もあった。それは暑すぎるほどの晴天で旅行に行けた為、家族旅行は大満足に終わった。
さあ、次はお父さんの楽しみの番。

…が、アルプスに青空はやって来ない。
よく見る山小屋のブログなんかは『今日も雨』とか『夕方に少しだけガスが晴れた』なんて言葉が並ぶ。そして行こうと思っていた日程は雨模様。
その夏休みを取りやめ、翌週へ繰り越す。翌週もダメ。
そんな事を繰り返していたら、とうとう最終週にたくさんの繰り越された夏休みが溜まり、もう翌週には越せなくなってしまった。
火曜日から日曜まで6連休。ただ、土曜日は息子くんの誕生日の為、金曜日に帰ってこないといけない。となると三泊四日で行ける事になる。
日帰りや一泊を小さく刻んでいくつか行こうかとも考えたが、ここまでまとまってあるのなら、ついにあの山へ行こうと決心する。

北アルプス最深部、歩いて到達するには最低二日かかる。二泊三日の行程にもうひと山つけて三泊四日にした。
靴擦れ問題で一泊二日より多い山行をあきらめていたが、4Eの超ワイドの登山靴の購入で問題解決。だからもうためらう要因は無かった。あとは天気次第。

前の週から予定している日程の天気予報をチェック。一週間先の天気なんて毎日毎日コロコロ変わっていく。一度すべての日程に雨マークがついてものすごくガッカリしたが、翌日には曇りベースに晴れマークがちょこちょこついてる様になったりと安定しなかった。
そして予定日前日の月曜日、お昼頃に見た週間天気では曇りがちだが雨マークが無かったから『行こう!』と決心する。


今回は初の三泊四日なので持っていく食料は多めだ。豪華にするととても持ちきれないのでほとんどが湯で戻すアルファ米系か袋ラーメンやフリーズドライのおかず。オールカリカリモノで今どきの犬ですらもうちょっとしっとりしたものを食べるはずだ。

着替えも大幅に少なく。ただ、パンツだけは日程分。水は現地調達。いつも持っていく大好きなお酒もあきらめた。水や酒を入れるスペースが無かったからだ。酒も山で買えばたぶん倍くらいの値段だろう。でもきっと買うんだろうなぁ。


『お父さん、いつ帰ってくるの?』

正直に日程を息子くんに言うと、けっこうショックな様子。父親不在期間がそんなにも長いとは思ってなかった様だ。ポロポロと涙をこぼすので『行くのやめようか?』と聞けば『行ってこい』と言う。寂しいのと うるさい父がいなくなるうれしさに挟まれて葛藤している様だ。
『絶対に死なないでね』という縁起の悪い言葉を背に北アルプスに向け出発した。



深夜、新穂高の登山者用駐車場へ到着…できない!
新穂高の手前の道路沿いの山の斜面に不安定な浮石というか岩がある為、20時30分~翌朝5時まで通行止めになる。
マジすか!4時に車から出発しようと計画していたので大きな時間のロスになる。
嘆いていてもしょうがないので手前の足湯公園の駐車場に停め、寝た。

通行止めが解除される30分前に目を覚まし、新穂高の駐車場へ着いたらすぐに出発できるように着替えやら朝食を採るやらを済ませた。

5時前に通行止めの場所に到着。すでに20台ほど並んでいた。工事用信号が青になると皆一斉に奥へと進んでいく。そして平日ゆえ少し空いている駐車場へ車を停め、すぐに出発した。
4日間帰ってこないので窓が開いてないか、ルームランプが点いてないか、傷む食品が車内に残ってないか入念にチェックした。

そして5時20分、駐車場を出発。
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計画より遅れる事1時間20分。ちょっと誤差にしては大きすぎるけどしゃーない。

駐車場を抜け、ロープウェイ乗り場方面へ向かう。
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およそ10分で『新穂高登山指導センター』に到着。
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ここで『YAMAP』を起動させたり、大きいトイレに行ったりして準備を万全にした。
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by moriyart | 2017-09-02 06:54 | 鷲羽・水晶・黒部五郎